ライフ

自由律俳句の鑑賞にルールはない—ピース又吉“自由のすゝめ”

俳人の故・金子兜太氏(撮影/今井卓)とピースの又吉直樹氏(撮影/国府田利光)

俳人の故・金子兜太氏(撮影/今井卓)とピースの又吉直樹氏(撮影/国府田利光)

「五・七・五」の17文字の中に、季節を表わす「季語」を入れて詠むのが有季定型の俳句の基本ルール。それに対して、文字数にこだわらず、季語がなくてもよしとするのが「自由律俳句」だ。その代表的な作者である種田山頭火(1882-1940)や尾崎放哉(1885-1926)の俳句が、新型コロナ禍の今、再び見直されている。

「咳をしても一人 放哉」「うしろ姿のしぐれてゆくか 山頭火」など、自分の「孤独」と向き合うような言葉が、時に「心を軽くさせる」ような作用をしてくれるという声もある。

 むしろ、俳句をまったく知らなかったという人には、定型やルールがない自由律のほうが親しみやすいかもしれない。「創作」だけでなく、「鑑賞」の仕方も「自由」なのだから——。

 * * *
 今日「自由律俳句」と呼ばれている新しいジャンルの俳句が生まれたのは、明治後半から大正にかけて、今から100年以上も前のことになる。その誕生に大きく貢献したのが、荻原井泉水(せいせんすい)が立ち上げた俳句機関誌『層雲(そううん)』だった。

 山頭火も放哉も、ともに同世代の井泉水を師としながら、『層雲』でたくさんの句を発表した。それらは、100年経った今でも、それだけの古さを感じさせない不思議な魅力がある。

種田山頭火(左)と尾崎方哉(写真提供/「山頭火」春陽堂書店、「方哉」鳥取県立図書館)

種田山頭火(左)と尾崎方哉(写真提供/「山頭火」春陽堂書店、「方哉」鳥取県立図書館)

「すばらしい乳房だ蚊が居る」「秋風あるいてもあるいても」─印象的な名句の数々

 自由律俳句の巨人として並び称される2人の句の中には、どこかで目にしたことがある句があるかもしれない。

「分け入つても分け入つても青い山」 山頭火

「たつた一人になりきつて夕空」 放哉

「へうへうとして水を味(あじは)ふ」 山頭火

「こんなよい月を一人で見て寝る」 放哉

「鉄鉢(てつぱつ)の中へも霰(あられ)」 山頭火

「漬物桶(つけものをけ)に塩ふれと母は産んだか」 放哉

「あるけばかつこういそげばかつこう」 山頭火

「すばらしい乳房だ蚊が居る」 放哉

「秋風あるいてもあるいても」 山頭火

「入れものが無い両手で受ける」 放哉

「や」とか「かな」「けり」といった独特の表現(切れ字)もなく、古語や昔ながらの言い回しもない。読みやすくて、普通の感覚で理解できるように思える。

 しかし、ふと疑問に思う。そんな自己流の鑑賞の仕方でいいのだろうか──。

松山市内にある山頭火の句碑の一つ「分け入つても分け入つても青い山」

松山市内にある山頭火の句碑の一つ「分け入つても分け入つても青い山」

関連記事

トピックス

「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン