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大河ドラマをより楽しむために…苦悩とがまんの連続の「徳川家康ヒストリー」

(写真/アフロ)

『どうする家康』(NHK)が1月8日にスタート(写真/アフロ)

 松本潤が徳川家康を演じる大河ドラマ『どうする家康』(NHK)が1月8日にスタートした。戦乱を鎮めて世を統べた家康とは、どんな人物だったのか。教科書には載っていないその人となりを、『徳川家康という人』(河出新書)の著者で東京大学史科編纂所教授の本郷和人さんが解説する。

●0〜6才「わずか2才で母と別れ、その後、人質に出される」

 天文11(1542)年、三河国(現愛知県岡崎市)の岡崎城で、徳川家康は生を受ける。父は岡崎城主の松平広忠、母は於大の方。幼名は竹千代と名づけられた。

 当時、松平家は遠江国と駿河国を支配する今川義元と同盟を組んでいたが、於大の兄・水野信元が今川家を裏切り、敵である尾張国の織田家と手を結んだため、竹千代が2才のとき、両親は離縁。母は家を出た。

 天文16(1547)年、父の広忠が今川氏から支援を受けるため、6才の竹千代は今川家へ人質に出されることになる。だが、船で今川家を目指す途中、義理の祖父の裏切りに遭い、人質として敵方の織田信秀に差し出されることになる。こうして家康の波乱の人生は始まった。

家康の幼名は竹千代。嫡男の信康や秀忠も幼少期にこの名を名乗った(写真/アフロ)

家康の幼名は竹千代。嫡男の信康や秀忠も幼少期にこの名を名乗った(写真/アフロ)

●7〜24才「15才で結婚。桶狭間の戦いで、人生が一変」

 天文18(1549)年、父の広忠が家臣に殺害されると、今川義元は岡崎城を接収。織田方の拠点・安祥城に攻め込み、信秀の子息で信長の庶兄(正室ではない兄)にあたる信広を捕虜とする。このとき信広と竹千代の人質交換が行われ、竹千代は今川家へ戻ることになる。

 天文24(弘治元年・1555)年、13才になった竹千代は今川家で元服し、名を松平次郎三郎元信と改める。今川義元の妹の娘で、義元の姪にあたる瀬名姫(築山殿)を娶ったのは15才のときだ。その後、元信から元康に改名。永禄2(1559)年には長男の信康、その翌年には長女の亀姫が誕生する。

 そんな中、駿河の今川家と尾張の織田家が桶狭間で衝突。当初、2万5000人を率いる今川軍が有利とみられたが、急な天候の変化に乗じて、わずか2000人規模の織田軍が奇襲をしかけ、今川軍は総崩れに。義元はあっけなく討ち取られてしまう。今川軍の一員として参戦した元康は、義元の敗北により、故郷・岡崎へ戻ることになる。

 岡崎城主となった元康は、永禄6(1563)年、「家康」と名乗るようになる。同年、家康の嫡子・信康と、信長の娘・徳姫が婚約。織田家との同盟関係が強化される。元禄9(1566)年には名字を松平から徳川に改め、名実ともに今川家と決別したことを世間に知らしめた。

●25〜39才「九死に一生を得た三方ヶ原の戦の後、妻と息子を諜殺」

 今川を滅ぼし、遠江を手中に治めた家康は、信長とともに姉川の戦いで浅井・朝倉軍を破り、武将としての名を上げる。が、武田信玄との三方ヶ原の戦いで大敗。信長の命により、武田と通じていた疑いで、息子の信康を自害させ、妻の築山殿は家臣によって殺害された。

『尾州桶狭間合戦 歌川豊富』(写真/アフロ)

『尾州桶狭間合戦 歌川豊富』(写真/アフロ)

●40〜42才「本能寺の変で信長が自害。秀吉との戦いへ」

 天正10(1582)年6月、信長は明智光秀の謀反により、本能寺で自害したという知らせが堺見物をしていた家康のもとに届く。信長の家臣であった家康は身の危険を感じ、33人のお供とともに伊賀を越え、岡崎へと逃れる。

 信長の後継者争いは、謀反を起こした光秀を討ち取った羽柴(豊臣)秀吉を中心に展開していくが、秀吉に対抗するため、信長の次男である信雄は家康を頼り、秀吉と家康は小牧・長久手の戦いで激突。しかし、この戦いは決着がつかぬまま停戦となる。

 その後、秀吉は母と妹の朝日姫を人質に出して臣従を願い出るが、これは秀吉優位の和議となる。秀吉は天下取りのため、北条の領地だった小田原城征伐の先鋒を家康に命じる。

●43〜60才「天下分け目の関ヶ原の戦いで、ついに家康、天下を取る」

関ケ原の戦いの当日の様子を俯瞰図にした『関ケ原合戦図屏風』(写真/アフロ)

関ケ原の戦いの当日の様子を俯瞰図にした『関ケ原合戦図屏風』(写真/アフロ)

 天正13(1585)年、秀吉はさらに攻勢を強め、従一位関白となり、政権を担う。北条氏の居城である小田原城が落城間近になった頃、家康は秀吉から「城が落ちたら、関東八州を与える」と告げられる。これは北条氏の領土である伊豆国、相模国、武蔵国などを与える代わりに、これまでの本拠地である三河国や遠江国を捨て、関東へ転封(領地替えのこと)せよという意味で、家康にとって分のいい話ではなかったが、30万の大軍を持つ秀吉には逆らえず、江戸城に入城する。

 慶長3(1598)年8月、秀吉は体調を崩し、63才で生涯を終える。幼い秀頼に政務はできず、豊臣政権の運営は五大老(家康、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家、上杉景勝)に委ねられるが、前田利家の死去でそのバランスが崩れ、家康が政務を取り仕切るようになる。

 そんな状況を快く思わない五奉行の1人・石田三成は、毛利輝元を総大将とし、家康に対して挙兵。慶長5(1600)年9月15日、家康方約8万人、三成方約8万人が関ヶ原(岐阜県不破郡)で激突。関ヶ原の戦いが起こる。一進一退の攻防が続く中、小早川秀秋の裏切りにより、天下分け目の対戦は8時間で家康方が勝利を収めた。

 家康は負けた三成方の領土を取り上げ、豊臣家の領土も減らし、豊臣家は大大名から大名に格下げとなった。

●61〜74才「征夷大将軍となり、江戸幕府を開く」

征夷大将軍となった家康。その後、260年もの長きにわたり、江戸幕府が実質的に日本を支配した(写真/アフロ)

征夷大将軍となった家康。その後、260年もの長きにわたり、江戸幕府が実質的に日本を支配した(写真/アフロ)

 関ヶ原の戦いから3年後の慶長8(1603)年、家康は朝廷より征夷大将軍に命じられ、名実ともに天下人となり、江戸に幕府を置く。このとき、家康は61才。息子の秀忠の娘・千姫を豊臣秀頼に嫁がせ、親戚関係を結ばせる。

 家康は手に入れた征夷大将軍の地位をわずか2年で秀忠に譲り、2代目将軍・徳川秀忠が誕生する。これは徳川がこの先も天下を取り続けることを意味していた。将軍の座は息子に譲ったものの、政治の実権は家康が握っていた。

 慶長19(1614)年、豊臣征伐を決定し、それに抗う豊臣家と11月に大坂冬の陣が勃発。豊臣方との講和が持ちかけられたが成立せず、再び夏に大坂夏の陣が勃発。家康は悲願であった豊臣を滅ぼした。元和2(1616)年、家康は74才でその生涯に幕を下ろした。

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2023年1月19・26日号

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