侮辱罪厳罰化などを盛り込んだ改正刑法が成立したことを受け、記者会見する松永拓也さん(中央)、プロレスラー木村花さんの母・木村響子さん(左)、スマイリーキクチさん(右)ら。2022年6月13日(時事通信フォト)
ネットでの誹謗中傷対策を求める声が高まったのは、それが有名人など一部の人にとっての問題ではなくなり、被害者が追いつめられる事例が目立ってきた影響もあるだろう。そして今では、芸能人でもなければインフルエンサーでもない人であっても、たわいもない日常の発信しかSNSでしていなくても、突然、誹謗中傷メッセージを受け取ったり、目にしてしまった経験をする人が増えている。
SNSで誹謗中傷を受けたときにできること
明日は我が身の問題、SNSで誹謗中傷を受けたとき、何ができるだろうか。たとえば誹謗中傷している投稿の削除、訂正や慰謝料などの要求、刑事罰を求めるなど対処方法はいくつか考えられる。いずれにしても、インターネット上で誹謗中傷の被害に遭ったときは、その画面をそのままキャプチャして取り込み保存することが、被害に対抗する第一歩となる。
「被害を訴えるにあたり、民事であっても刑事であっても、SNSであればスクリーンショットで問題とする発信を残しておくこと、できればPCで残しておきURL(※Uniform Resource Locator、インターネットアドレスと呼ばれることもある)を確認できる状態にしておくことが望ましいです」(松坂弁護士)
問題の発信を証拠として残しておくのは、インターネットでサービスを提供している会社に、どこの誰による発信なのかを開示してもらうためにも必要なことだ。この発信者情報開示請求は最短でも数ヶ月かかることで知られていたが、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法が施行されたことで、場合によっては1か月かからずに分かる事例も出てきた。SNSや検索サービスなどを提供する会社と、ユーザーにインターネット接続サービスを提供する会社のそれぞれに対し2回行う必要があった請求が、1回で済むようになったからだ。侮辱罪の時効が厳罰化によって1年から3年へ延長されたとはいえ、時効が迫ってハラハラするという状況も改善されそうだ。
「改正法では、発信者情報開示命令事件という形の手続が新設されました。これにより、2つの手続きが必要だったものが、1つの手続で行えるようになるなどの点で発信者に関する情報開示手続が迅速になるという利点があります。その他証拠保全に関する利点もあるとはいえ、あくまで発信者に関する情報を得ることに関する利点が主であり、その上で発信者に対して民事・刑事の責任を追及していくことには変わりありません」(松坂弁護士)
とはいえ警察沙汰にするのは抵抗があると考える人もいるかもしれない。だが、侮辱罪を問うのであれば、民事だけでなく刑事でも責任を求めることも視野にいれたほうがよいと松坂弁護士は言う。
「民事で責任追及していくにあたり、刑事事件が先行して進んでいることは大きな利点となります。警察に動いてもらいやすくするためにも、早期の時点で弁護士に介入してもらうことが望ましいと思います」