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60人以上が処罰、ラブレターを押収、凄惨な脱走劇… 徳川幕府を揺るがした大奥事件簿

絵島と生島を描いた『新撰東錦絵』。絵島は江戸前の美人で派手好きだったとされる(国立国会図書館蔵)

絵島と生島を描いた『新撰東錦絵』。絵島は江戸前の美人で派手好きだったとされる(国立国会図書館蔵)

 毎年、大きな話題を集めるNHK大河ドラマ。2023年の『どうする家康』では、松本潤が徳川家康を演じる。260年続いた徳川幕府において、将軍の血筋を絶やさぬために設けられたシステムが「大奥」だが、その長い歴史の中では、数々のスキャンダルが存在する。

 最も多くの人々が処罰された事件が、絵島生島事件だ。1714(正徳4)年1月、七代将軍・家継の生母である月光院の側近で御年寄の絵島は増上寺に参拝。その帰途に歌舞伎の観劇に立ち寄った。奥女中の芝居見物は禁止されていたが、当時は半ば黙認されていたらしい。

 観劇とその後の宴会で盛り上がった絵島は、大奥の門限である午後6時に遅刻。門番と一悶着の後、何とか城内に通されたが、一件を聞きつけた幕閣が取り調べに乗り出した。その結果、絵島は流罪。処分された関係者が60人以上におよぶ一大疑獄事件に発展した。

 疑われたのは、絵島と芝居役者の生島新五郎との密通だった。絵島は無罪を主張しながら流罪先の高遠藩で失意のうちに病没。噂の相手である新五郎も三宅島に流され、その後の消息は分かっていない。多摩大学客員教授で歴史家の河合敦氏がいう。

「事件の裏には大奥で権勢を誇った六代将軍・家宣の側室である月光院と、家宣の正室で子を産めなかった天英院の権力争いがあったといわれています」(河合氏、以下同)

僧侶が奥女中とやり取りしていた艷書を押収

 絵島生島事件は絵島が最後まで容疑を否認し続けたため真相の分からぬ事件だったが、密通が明らかとなり、江戸市中を騒然とさせたのが、延命院事件である。延命院は日蓮宗の寺院で、住職に日潤(一説には日道)が就いたのは、1796(寛政8)年のこと。大変な男前と評判で、庶民の女性が日潤を目当てに足繁く通うほどだった。

 やがて、庶民だけでなく、奥女中も通っている、との噂が立ち始めた。寺社奉行が慎重に捜査を進めたところ、日潤が奥女中とやり取りしていた艶書(ラブレター)を押収。出家した僧侶という身分でありながら、奥女中と関係を持ったのみならず、妊娠の上、堕胎させた女中の存在まで発覚した。

 判決文でやり玉にあがった女中は2名だったが、巷間の噂では、日潤の相手は50人以上にのぼる、とされた。日潤は1803(享和3)年7月に死罪に処されている。

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