セクシービデオ業界において、データ流出が問題になるケースはこれまでにも複数回あったが、当事者が提訴に踏み切るのは異例だ。
「映像が流出した翌日にその作品の監督が行方をくらませ、被害に遭ったにもかかわらず泣き寝入りする女優さんがいました。業界には、少なからず当事者が声を上げづらい状況があります。私はすでに引退から約5年経っていることもあり、今現在ヌードの仕事は一切していない中で、このような流出が起こったことは現在の活動にも大損害なので、私がやらずに誰がやるという気持ちで声を上げることにしました」(澁谷氏)
今回の提訴について、若林弁護士は次のような狙いもあるという。
「現在の『AV新法』では出演強要を避けるために業界の適正化が叫ばれています。しかし、今回のようなデータ流出は当事者の引退後の暮らしやキャリアにも多大なる損害を与えるものです。この提訴により、セクシービデオのデータ管理面における適正化も図ってほしいと思います」(若林弁護士)
具体的に、「データ管理面においての適正化」とは、どのようなものなのか。澁谷氏はこう語る。
「私は、自分が出演した作品の動画の管理がどうなっていたかまでは把握していませんし、インターネットに詳しいわけでもないですが、撮影データは複数人で管理するのではなく、例えばメーカー内に編集所やデータ管理所を設けて、発売後のデータはそこでのみ管理するといった徹底を図ってほしいです。セクシー女優になることのリスクを考えるのが新法ならば、作品そのものへの丁寧な扱いを徹底できるような法の改正をぜひしてほしいと思います」
異例の「元セクシー女優の声」は、業界の姿勢を問うている。
取材・文/河合桃子