芸能

映画『ちひろさん』主演・有村架純が演じる元風俗嬢の“分け隔てのない優しさ”に癒される

Netflix映画『ちひろさん』2月23日より全世界配信&劇場公開(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

Netflix映画『ちひろさん』2月23日より全世界配信&劇場公開(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

 ドラマや映画、CMへの出演だけでなく、NHK紅白歌合戦や『日本レコード大賞』の司会を務めるなど、縦横無尽の活躍を見せる有村架純。放送中の『どうする家康』では家康(松本潤)の正室・築山殿(瀬名)役でNHK大河初出演を果たした。そんな有村が主演の新作映画『ちひろさん』が、2月23日、Netflixにて全世界配信スタートとなる。本作で有村はどんな演技を見せているのか。ライターの小林久乃氏が紹介する(注/作品の内容に触れる箇所があります)。

 * * *
 2023年はまだ序盤ながら、早くも胸打つ映画に出会ってしまった。有村架純さん主演の『ちひろさん』(Netflix/アスミック・エース)である。人気漫画の待望の実写化ということで、2月23日の配信スタート前から話題を呼んでいる。原作、映画ともにチェックした私の意見としては「再現性、完遂」である。

Netflix映画『ちひろさん』2月23日より全世界配信&劇場公開(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

さまざまな登場人物がちひろさんのいる弁当屋に買いに来る(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

 ゆったりとした時間が流れる海辺の田舎町の弁当屋で働くちひろさん(有村)は会社員と風俗嬢、ふたつの職歴を持つ女性。ちょっと口は悪いけれど、彼女の元にはホームレス、女子高校生、小学生、力仕事で働くお兄さん……と街のさまざまな人が訪れてくる。皆、ちひろさんに会いたくなるのだ。誰に対しても分け隔てなく接して、それぞれの思いや悩みを受け止めていく、ちひろさん。そして彼女もまた自身の中に消化しきれない何かを抱えているのだった──これが作品のあらすじである。

潔いほど“分け隔てのない”ちひろさん

 どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しながら日常の風景が流れていく『ちひろさん』。見終えたときに「ああ……」と脳裏に残ったのは、彼女が誰に対しても“分け隔てなく”接する姿だった。公園で見かけた猫と戯れ合う。ふとしたきっかけで出会ったホームレスのおじさんを自宅に招き入れて体を洗い、一緒に弁当を頬張る。猫にも、男にも。悩む10代たちに接する際も決して大人ぶらず、同じ目線で話をする。

港町に流れるゆったりとした時間のなかで物語は進む(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

港町に流れるゆったりとした時間のなかで物語は進む(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

 水商売で働く母親に世話をしてもらえない小学生のマコト(嶋田鉄太)とも対等に揉めて、挙句怪我をさせられる一幕があった。やがてマコトが謝罪すると「……それじゃあダメだな。謝る時はちゃんと相手の目を見て言わなくちゃ」とちひろさん。そう言って笑う。つられてマコトも笑う。

 マコトとは真逆で、恵まれた家庭に窮屈さを感じるオカジ(豊嶋花)も、吸い寄せられるようにちひろさんの側へ歩み寄る。こんなやりとりが印象的だった。

オカジ「あの……何も聞かないんですか」
ちひろさん「何を聞くの? 何か聞いて欲しかった?」
オカジ「気になりませんか。ふつう、名前とか、年齢とか、目的とか。どんな人かわかんないって不安じゃないですか?」
ちひろさん「そんなの当てにしたことないもん。第一、それが本当のことかどうかわかんないし。(中略)その人がどういう人か目を見ればわかるよ」

 忖度なしにコミュニケーションを取るほうがいいのか、悪いのか。意見は十人十色である。時と場合によることは間違いない。でも、人によって態度を変える自分には疲れるときがある。そんなとき、ちひろさんの潔いほどの“分け隔てのなさ”が愛おしくなる。作品にはそんな人物が描かれている。

オカジ役の豊島花(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

オカジ役の豊島花(c)2023 Asmik Ace, Inc. (c)安田弘之(秋田書店)2014

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト