スポーツ

ダルビッシュ有「結婚して、一番の役割は夫であること」発言から見えた人生観の変化

誰がダルビッシュ有を変えたのか

誰がダルビッシュ有を変えたのか

 WBC侍ジャパンの宮崎合宿全日程が終了。その熱狂と話題の中心にいたダルビッシュ有(36)が、後輩選手を技術面でも精神面でもサポートし、「侍の牽引役」となった姿は多くの野球ファンの印象に残った。かつての“自由奔放なエース”はいかにして変貌を遂げたのか。現地取材したノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 北海道日本ハムに在籍していたダルビッシュ有をインタビューした14年前、にわかに信じられなかったのは変化球に対する希有な身体感覚とオタクと呼べるほどの変化球に対する探究心・研究心だった。

「最近は“キレのあるボール”と“キレのないボール”を投げ分けています。ホームベースに近い位置で曲がる変化球がキレのあるボールだと思っています。だいたい三振を狙う時はまずキレのないボールを投げておく。すると打者はそのボールの軌道と、自分のスイングを照らし合わせて、どうしたらバットの芯に当たるかを考え始めますよね。だからこそ次に僕は同じようなフォームから、同じ変化球を打者寄りで曲げる。すると空振りする確率が高いですし、当たっても凡打にしかならないんです」

 あまりに異次元の投球理論だった。しかし、近年はトラックマンなどのデータ解析機器が開発され、ダルの身体感覚が、数値として明らかになり、より探究心も刺激されていることだろう。

 アメリカ西海岸のサンディエゴに近い陽気に包まれたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)侍ジャパンの宮崎合宿2日目。ダルは初めてブルペンに入り、栗山英樹監督や若手投手陣、野茂英雄氏や松坂大輔氏といった大物が見守る中、トラックマンのデータを一球ごとにタブレットで確認しながら丁寧に白球を投げ込んだ。

「回転軸の角度、自分が思い描いていたとおりの変化が出せているか。あとは同じような腕の振りで投げるフォーシームとツーシームの球速差を気にしました。自分の場合ツーシームのほうが速い時もあるんですが、球速差がなければないほど、打者は見極められない」

 自身の求める投球を具体的に言語化できることも大きな才能だ。だからこそ、若手の相談にも的確なアドバイスを送れるのだろう。

「宇田川会」「湯浅にグミ」 若手への“助け船”

日本の強みについてダルは「人と人との距離が近く短期間でまとまり、一丸となった野球を見せられること」と模範解答

日本の強みについてダルは「人と人との距離が近く短期間でまとまり、一丸となった野球を見せられること」と模範解答

 その日の練習終わりには、宮崎名物の肉巻きおにぎりを食べていて、ほんの少しだけ代表取材の現場に遅れた。そんなダルに対し、2009年の侍ジャパンで一緒だった川崎宗則氏がツッコミを入れた。

「今日は時間がなく、プロテインを飲まなかったので、タンパク質の量が足らず、肉巻きおにぎりで補食していました」

 休養日にはチームにうまく馴染めていないことを吐露していた宇田川優希(オリックス)をスワンボートの乗船に誘い、夜に予定していた投手会を「宇田川会」と命名して激励した。昨年7月に育成契約から支配下となり、オリックスの日本一に貢献するだけでなく、侍にも選出された24歳は、オリックスのキャンプイン時から体重超過を指摘されてきた。そんな宇田川はダルから「アメリカには太っている選手はいっぱいいるよ」という“助け船”によって気持ちをらくにしたという。

「減量、減量というけど、体を見てもそれほど太っていないし、体重を減らすことよりも動けるということが大事。(ここまでの経緯は)ひとりの人間が背負うにはあまりに大きすぎる」

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト