図々しい人たちに振り回されるサービス提供側(イメージ)
中里さんのホテルでは、喫煙者向けに「喫煙ルーム」の設置をしていた。全館禁煙になったため、客への配慮をした格好だが、定員や滞在時間などルールを守らない客が続出しやむなく閉鎖。しかし「以前は吸えたはずだ」と、今なお喫煙所跡地で隠れて喫煙する客が後を絶たないのだともいう。善意をはき違えた客は、結果的に自身の首を絞めることにもなってしまったと指摘する。
社会情勢が変われば常識だって変わるし、人々の思考もアップデートされていく。そうして健全な「新しい社会」が生み出されてきた。どんな場面でどうふるまうべきか、相手に対してどのように接するのが推奨されるのか、明文化されずとも社会で共有されることも多い。そうやって生み出されたコミュニケーションの前提を、受け取る側も感謝と配慮を忘れないのが、円滑な社会生活のための基本だろう。ところが、それぞれに都合の良い形で解釈され、図々しくなったもの勝ちだという勢力を抑えにくくなってきた。そのためか、お互いに気を配りあって社会生活を送るのは無駄だという悲観的なムードも漂ってきた。このまま息苦しい世の中を、日本社会は目指してよいのだろうか。
