「付け人をやったことがないのでありがたいです」
今回の宮城野親方の決断が周囲から賞賛されているのは、近年、付け人の経験をほとんどせずに関取に出世していく力士が目立つなかで、その弊害を指摘する声も少なくないからだ。前出・若手親方が続ける。
「最近は大学や実業団でタイトルを獲って付け出しデビューし、2~3場所で関取となるケースが少なくない。そのためチャンコ番の経験もなく、着物をたたむことすらできない学士力士が増えている。下積みが長い苦労人に比べ、学生相撲経験者のなかには現役時代から付け人の評判が悪く、引退後に部屋を興しても弟子の教育に苦労している者もいる。史上最速のスピード出世をしている落合にとって、いい機会になるんじゃないか」
力士は番付による「格差」がはっきりする世界だ。序ノ口と序二段は冬でも一重のウールの着物だけで、マフラーやコートは十両以上の関取にならないと着用できない。履物も序ノ口と序二段は素足に下駄、雪駄は三段目以上にしか許されない。幕下以上になれば畳張りの雪駄が履ける。いきなり幕下15枚目格に付け出された落合は、付け人だけでなくこういった格差も経験していない。それゆえか、6日目に付け人をすることになったことを明かした落合はこんなコメントを残している。
「付け人をやったことがないのでありがたいですし、自分自身の勉強だと思っています。付け人の方がどういう気持ちでされているのかというのを、自分もやらないと分からないと思うので体験してみたいです」
宮城野親方の狙いは、十分に伝わっているようだ。