スポーツ

「まったく気づかなかった」力道山から受けた横浜での「プロポーズ」秘話【力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~#24】

2023年に行われた立春パーティーにて

2023年に行われた立春パーティーにて

“日本プロレスの父”力道山が大相撲からプロレスに転向し、日本プロレスを立ち上げてから2023年で70年が経つ。力道山はすぐに国民的スターとなったが、1963年の殺傷事件で、39年間の太く短い生涯を終えた。しかし、力道山を取り巻く物語はこれで終わりではない──。彼には当時、結婚して1年、まだ21歳の妻・敬子がいた。元日本航空CAだった敬子はいま81歳になった。「力道山未亡人」として過ごした60年に及ぶ数奇な半生を、ノンフィクション作家の細田昌志氏が掘り起こしていく。最終回目前となった第24話では「交際」が始まった2人の思い出が明かされる。【連載の第24回。第1回から読む】

 * * *

第24話「夜物語」

 1962年11月23日に行なわれた“お見合い”を機に、力道山と田中敬子の交際は始まった。

 ただ、交際と言っても、その時点では結婚を前提にしたものではなく、一緒に食事をして、お茶を飲んで、会話を楽しむという他愛もないものである。それでも、力道山からすれば大きな前進と言えたかもしれない。

「大体コースは決まってました。ホテルオークラで待ち合せて、ホテルのレストランで食事をするか、カフェでお茶するかして、それで私は翌朝も早いので横浜の自宅まで車で送ってもらうの。やっぱり、スターだから大っぴらに外では会えない。本人もそこは神経質でしたね」(田中敬子)

 いつもなら、ベンツのオープンカーを法定速度以上で飛ばしていた力道山も、敬子を助手席に乗せるときは、シートを被せて、何かの冗談のように速度を落として、ゆっくりと第二京浜を走った。少しでも長く敬子と一緒にいるためである。

 ある夜、いつものように、のろのろとベンツを走らせていると、後方から「何やってんだ」とばかりにクラクションが鳴らされた。赤信号になったタイミングでそのキャデラックが隣に並ぶと、窓を開けて言った。

「リキさん、何をトロトロ走ってんだよ」

 国鉄スワローズのエース、金田正一だった。

「おお」

「後ろを見ろよ、みんな抜きたくても抜けずに困ってるよ」

「わりいわりい」

 金田は助手席の敬子の姿を認めると「お、邪魔したね、安全運転でー」と言って、軽くクラクションを鳴らして走り去った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン