──華やかに見える世界ですが、現実は厳しいのですね。
「中には『裏引き』と言って、女の子に直接貢がせているやつもいます。店では誕生日の月だけお金を使ってもらって、それ以外は店を通さず、プライベートで会って小遣いをもらうっていうパターン。やっていることがヒモですよね。うちの社長(『クラブ愛』時代の)は、そういうのに凄く厳しい人だった。お客と裏引きするホストは辞めてもらって結構という態度でしたね」
『ホス狂い』は親の愛に飢えた子
──ホストクラブに通う女性はどのようなタイプなのでしょうか。
「ホストの営業の仕方によって、ついているお客さんは違うんです。水商売の子ばかりの人もいれば、いわゆるパパ活をしているような子とか……。僕の場合は経営者が多かったです」
──今は、自分の身の丈以上にホストに貢いでしまう女性が『ホス狂い』と呼ばれていますが、当時からそのような女性はいたのですか?
「いましたね。それはあまり今も昔も変わらないんじゃないかな。でもいま怖いのは『パパ活』。自分を大事にしない女の子たちが、汗水たらして稼いだお金じゃないから、バーッと使ってしまう。お金が無くなっても“またパパ活すればいいや”っていう考えができあがっている。“パパ活の回数を増やせば、シャンパンタワーをやってあげられる”っていう発想になっちゃう。
そういう若い女の子をカモにするようなホストは逮捕されるべきだと思う。僕は絶対に女性が困るようなことはしなかった」
──そのような女性が増えている原因はあるのでしょうか?
「愛に飢えている子が多いよね。一度でも自分が本当に愛されて、自分もその人のことを一生懸命愛したっていう感覚を持っている子だったり、きちんと家族の愛情を受けて育った女の子だったら、パパ活みたいなお金の稼ぎ方や荒っぽい使い方をしないんじゃないかな」
──よくホスト業界では「売掛金」という言葉を聞きますが、どういう仕組みなのでしょうか。
「お客さんの飲食代を肩代わりするんです。ホストによっては、払えなくて借金を背負うこともあります。だから危ないですよ! 今は弁護士が書類を用意したり、身分証をコピーして売掛金が飛ぶ(支払わないで逃げること)のを防ぐようになったんですけれど。当時はそんなことはできなかったし、身分証をコピーするなんて野暮ったいという風潮もあったんですよ」
──それだけ、お客さんとホストとの信頼で成り立っていたのですね。でも現在のように書類を作成されると、不当な金額の請求でも若い女性が支払う義務が出てくるのでは。
「だから善悪でいえば悪の商売なんでしょうね、ホストって。だって人の人生も変えちゃうかもしれない。悪いホストに女の子がハマってパパ活を始める。僕はホストに、“お前は、その女の子の責任はとれるのか”って聞きたい。だってとれないじゃないですか。僕は、それこそ悪いホストに引っかかって、風俗店に住み込みで働かされていた女の子を夜逃げさせたこともあるし、精神的に不安定な女の子のメンタルケアもしてきた。そこまでやりましたからね」