武井俊輔・外務副大臣(時事通信フォト)

武井俊輔・外務副大臣(時事通信フォト)

側近の汚名返上のため

 ただ、イレギュラーな人選だったことは、2人の副大臣のこれまでの渡航先を見てもわかる。山田氏の渡航先がセネガルや南アフリカなどアフリカ諸国が大半なのに対し、武井氏はネパール、スリランカなどアジアが中心、アフリカ行きは初めてだ。

 武井氏がジブチ行きを志願した理由は容易に想像できる。武井氏といえば、2021年10月の総選挙前に“当て逃げ事故”で批判を浴びた人物だ。2021年6月、武井氏が同乗し、秘書(当時)が運転する車が東京・六本木交差点で自転車にぶつかり、軽傷を負わせながらそのまま立ち去った。武井氏は会見で「当て逃げをしたというような認識はなかった」と釈明したが、後に、警察の捜査でドライブレコーダーに後部座席にいた武井氏の「行ってしまえ」という声が残っていたことが報じられた【※注】。

【※注/武井氏所有の車は車検と自賠責保険が切れていたため、総選挙後の2022年1月、武井氏は道路運送車両法と自動車損害賠償保障法違反の疑いで書類送検された(不起訴処分)。運転していた当時の秘書も過失運転致傷の罪で略式起訴された】

 この事故で武井氏は地元(宮崎1区)で厳しい批判を浴びて総選挙では選挙区敗北、比例でなんとか復活当選した。邦人救援で名を上げ、汚名返上したかったのだろう。

 実際、武井氏はジブチに避難した邦人と面会する様子を写真入りでツイートするなど実績アピールに最大限利用した。

 だが、舞台裏を知る自民党外交族議員は冷ややかな視線を向ける。

「岸田総理は前回総選挙の時に苦戦する武井のために宮崎入りし、『最も信頼する政治家です』と応援したほどのお気に入り。今回の人選は側近議員にポイントをあげたいという親心なのだろうが、ジブチに行くはずだった山田副大臣にすれば、宏池会のスキャンダル議員の汚名返上のために、せっかくの邦人保護という晴れ舞台のチャンスを奪われたのだから内心穏やかではないはずだ。山田副大臣は麻生派の期待株だけに、親分の麻生太郎・副総裁は武井の横車を聞き入れた総理の判断が面白くないのでは」

 その麻生派の中堅はこう不平を鳴らす。

「総理の人事は公平でなければならない。派遣する副大臣の人選を入れ替えるなんていくらなんでも身内びいきが過ぎる」

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