原告側は「極めて異常」とし、弘利さんが寄付をした理由について訴状でこう主張した。
「弘利に対して寄付の勧誘をしたのは、金沢医科大学病院の病院長(2023年3月31日に退任)であり、弘利の主治医であったA医師(訴状では実名)だ。A医師は私たち弘利の家族に確認を取ることもせず、弘利の認知機能低下に乗じて秘密裏に寄付を行なった」
さらに原告は、A医師が「不自然に病状を隠そうとした」とも指摘する。訴状によれば、A医師は寄付があった3か月後、「笑顔で100歳まで社長を続けていただきたい。認知(症)はありません」と発言したという。谷口弁護士によれば、病院側は入院直後の1月に受けたMRI検査の結果の開示を要求しても、一向に開示しないというのだ。
寄付の場に同席した女性
この裁判については新聞やテレビ等でも報じられたが、マスコミでは触れられていない事実が訴状には書かれている。
弘利さんが2021年5月19日に同病院を訪れ、被告のA医師に対して寄付を申し出た場には、弘利さんの知人女性・Bさんが同席していたというのだ。
債務を負担させる家族には寄付を秘密にしていたのに、家族でもないBさんを同席させるのは「不自然極まりない」とし、訴状では「弘利の晩年の愛人」と断定。そのうえで、「A医師とも旧知の間柄にあるなど親密な関係であり、単なる付添者という立場ではなく、弘利の認知機能の低下に乗じて、A医師らに対して巨額の利益を得させる強い動機を有する人物である」と主張している。
このBさんは地元の高級クラブの名物ママで、金沢駅近くの飲み屋街の客は、「弘利さんはBさんの店の常連で、5~6年程前からのつきあい」だという。
Bさんの自宅の近隣住民は、次のように証言する。
「5~6年前からいかにも“社長の車”という感じの黒塗りの車が駐車場に止まって、足取りのおぼつかないおじいさんが家に入っていくのを何度か見ました。後から新聞やネットで見た澁谷工業の社長さんだと気づいた」
Bさんは過去に金沢医大病院の地下の食堂を経営していた。さらにA医師はBさんの在籍していたクラブに通っていたという証言もあり、遺族はA医師とも懇意な関係にあったと主張している。