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Eテレで反響を呼んだ『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』うさん臭くてでたらめ設定でもクセになる奇怪な世界

宇宙を漂う芸術の巨人・タローマンはシュールレアリズム星出身。芸術の匂いに誘われ地球にやってきた

宇宙を漂う芸術の巨人・タローマンはシュールレアリズム星出身。芸術の匂いに誘われ地球にやってきた(C)NHK・藤井亮2023

 2022年7月、NHK Eテレで平日深夜の時間帯、各回わずか5分の放送が全10話だったにもかかわらず、放送直後からSNSなどで大きな反響を呼んだテレビ番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』。先日刊行された『タローマンなんだこれは入門』では、詳細に作り込まれた世界観が明らかになり、ファンたちの間で早くも話題だ。“でたらめ”な設定で“ありえない”展開を繰り広げる奇怪な世界にどっぷりと浸っていただこう。

 テレビ番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』は、2022年7月からの「展覧会 岡本太郎」を盛り上げようと制作された。脚本・演出を務めた藤井亮氏が、「岡本太郎のスケールの大きさと衝撃を表現するには、巨大なものが暴れる特撮映像が一番いい」と語る同番組は、毎回「なんだこれは!」という岡本の声とポートレイトで始まり、「ばくはつだ! げいじゅつだ!」のテーマソングが延々と続く。

 太陽のマスクのタローマンが戦う奇獣は岡本の作品がモチーフで、太陽の塔を必殺技「雷人」で粉々にしたり、駄々をこねながら街を破壊する「駄々っ子」や、厳しい未来を見せつけて気力を奪う「未来を見た」を相手に、必殺技「芸術は爆発だ!」でねじ伏せる。

 タローマンの“生みの親”藤井亮氏は、武蔵野美術大学卒の気鋭の映像作家。「ばかばかしい」「くだらない」アイデアを大人のセンスとテクニックで作品に仕上げることで知られ、今回のタローマンはその集大成といえる。

 書籍『タローマンなんだこれは入門』をまとめるにあたって、「昭和の時代はでたらめなもの、うさん臭いものに溢れていましたが、今ではめっきり姿を消してしまいました。子供が安全に楽しめる『うさん臭いもの』を出すことができたらと、1ページ1ページ、うさん臭さを足しながら作りました」と語っている。

「タローマンの架空昭和世界が本物の入門百科シリーズに仲間入りできたことは、まさに虚構が真実に侵食していくかのようで恐ろしくも愉快であります」(藤井氏)

 1970年代の特撮作品のような凝りに凝った世界観を豊富なイラストと解説で拡張させた『タローマンなんだこれは入門』は、「1972年当時発行されたわけではないが、当時発行されていたらこんな本だっただろう」という設定で、「後世に残すべき歴史的名著のふり」をして“超復刻”。レトロな児童書のテイをとっている。その一端をご覧いただきたい。

※週刊ポスト2023年7月14日号

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