ライフ

60代女性記者、ひとり暮らしの部屋に祭壇を作る 死者と向き合うことで得られた落ち着き

部屋に

部屋に祭壇を作ってみたら(写真はイメージ)

 誰にでも訪れるのが“死”。年齢を重ねれば、自然と“死”が身近になってくるものだ。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、お盆を前に“死”について綴る。

 * * *
「いくつまで生きますか? それによって治療方針を決めますから」

 先日、最年長ボーイフレンドのO氏(91才)が、がん治療を受けている大病院でそう言われたそうだ。

「『家族と相談してきてください』って言うんだけど、オレ、娘や息子に『いくつまで生きたらいいんだ』って聞くのか?(笑い)」とO氏は笑う。

 40代医師のこのあけすけさをどう思うか。

 いつからか余命を本人に告知するのがオーソドックスになっているようだけど、それが本人や家族にとって最善か?ってね。これ、身近な人の死とどのくらいかかわったかで、ものすごく大きな差があると思うんだわ。

 私は60代に入って急に、家族や大事な人が相次いで鬼籍に入った。

 まずは6年前に年子の弟(享年59)が胃がんで。その8か月後に同じ病で義父(享年80)が。翌年の夏には生後3か月から19年間一緒に暮らした雄猫が。翌々年の春には在宅介護した母親(享年93)が亡くなり、翌年、小学校時代からの親友(享年66)が発病から2か月であっさり他界した。

「60代ってそういう年回りなんだよね。私も喪服がしまえなかった時期が何年も続いたもの」と70代の友人S子はため息をつくの。彼女は昨年、50年連れ添った夫を亡くしたばかりだ。

「しかし、不思議だよねー。死んだら、人は跡形もなく消えるんだから。

 ほんとにどこにもいないんだなって、あらためて思うんだよね」

 その気持ち、よくわかる。私もそう。それぞれの死出のセレモニーはちゃんとしたけれど、この世にいない、というどうしようもない現実は、そう簡単に受け入れられるもんじゃないんだよね。

 だけど、変な話、それぞれの死に対する感情に濃淡があって、私の場合、ストンと腑に落ちたのが93才の母親の死だ。

 死の約2か月前、施設に入っていた母親を見舞うと、「はあ(もう)こうた所にいられねぇ。家に帰るんだ」と息巻いている。が、激しい口調と裏腹に明らかに目に力がないの。それで願いがかなわないとわかると、「はあ、わがった。オレは100まで生きてやっからな」と言うので、「頑張ってねー」と背中を向けながら言ったのが最後の会話だ。

 死の2日前、意識のない母親に「今年は畑、手伝うよ」とかなんとか耳元でウソ八百並べたのが永遠の別れで、臨終には立ち会っていない。

 それでも私に何の悔いもないのは、亡くなるまでの4か月間、枕を並べて寝て、シモの世話をしたからだと思うの。母ちゃんから受けた愛情は返したからな、とそれはいまでも思っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト