このように「20代俳優が助演経験を重ねてクレジットの順番を上げていく」というステップアップは、ドラマが社会的に強い影響力を持っていた1980年代後半から1990年代前半あたりでしばしば見られた形。当時はいきなり主演に起用されるルートと、助演経験を重ねて主演をつかむルートの2つがありました。前述したように現在の視聴者感情を考えると、後者のルートに絞られつつある現在は、ドラマ業界が健全な方向に進みはじめているようにも見えます。
その1980年代から1990年代に初主演を飾ってきた俳優の中には、今夏も『転職の魔王様』に出演する石田ゆり子さん、『こっち向いてよ向井くん』に出演する財前直見さん、『ハヤブサ消防団』に出演する山本耕史さんのように、長い期間活躍する人が少なくありません。その意味で今夏初主演を飾った俳優たちは、今後数十年間にわたってドラマシーンを担う可能性が高いのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。