「フィンランド人はアイディアが浮かんだら気軽に口にするところがあって、それほど本気ではなくても『いいねいいね』って盛り上がったりするんです。その調子で日本人と話をすると、あとで『あっ、真面目に受け止められていたんだな』って気付くことがある。『週末どうするの?』みたいな言葉も、何かの誘いじゃなくて挨拶的なものなんだけど、スケジュールを知りたいの? って思われてしまうこともあったり。本気度の違いを測れなくて、今も失敗することがあります。
でも最近は、ちょっとでも相手の表情が変わったり、違和感を覚えたらすぐに『いやいや、私何言った? 今の大丈夫だった?』って聞きます。あとで『変なこと言ってたよね』って言われるのはつらいから。性格的に、間違えるのが結構嫌なんですよね」
外国人だから少しぐらい間違っていてもいいという「手加減」をされたくない、とラウラさんは強調する。
「早稲田時代に、致命的なミスをずっとしていたことがあるんです。なんだったかな、『ランチをするに行く』みたいな、すごく初歩的なミス。半年くらいそれを繰り返していて、ある時友達に『ちょっとあれ、間違ってる気がするけど』って言われて、ああっ……! ってなりました。
いいよいいよそのレベルで、って甘やかされる、優しくされるのが精神的に一番堪えるんですよ。間違えるのは別に恥ずかしいとは思わなくて、むしろこれから頑張ろうと思える。だから、言ってもらいやすい雰囲気を自分から作って、いつでも直してねって友達には伝えてます。
大阪の友達のリアクションはありがたいです。私が間違えるとすぐそれを繰り返すから(笑)。相手は無意識にやってるのかもしれないけど、その場で分かると安心します。
なんかね、フィンランド語の抑揚と大阪弁って若干似てるような気がするんですよ。『大阪に留学してたの?』って聞かれることが時々あって『いやいや、函館なんです』って何度答えたことか(笑)。ユーモアのセンスもちょっと似てるかな。ブラックユーモアのテイストが」
(第3回に続く)
【プロフィール】ラウラ・コピロウ/フィンランド生まれ。フィンランド大使館商務部上席商務官。ファッション・ライフスタイル担当。高校生の時、北海道・函館に留学し、大学で早稲田大学に留学。その後、国費留学生として北海道大学大学院に入学し、修了。日本大手企業での就職を経て、2018年から現職。パフェ愛好家としても知られ、インスタグラム(@laura_finrando)には美味しそうなパフェの写真が並ぶ。
◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。