1980年、東京都にあった密造業者を家宅捜索し、偽物の札入れやバッグを押収する警視庁捜査員。かつては国内業者が偽造品を製造していた(時事通信フォト)

1980年、東京都にあった密造業者を家宅捜索し、偽物の札入れやバッグを押収する警視庁捜査員。かつては国内業者が偽造品を製造していた(時事通信フォト)

 実際、偽ブランド品は、誰でも気軽に利用できるフリマサイトやオークションサイトでも簡単に見つかる。「海外並行輸入品」と銘打ち、高級ブランド「グッチ」の偽物を販売するページを丹念に読み込んでいったところ、販売者は関東在住の主婦であることが、比較的簡単に判明した。この主婦は、SNS上で知り合った人物から「転売で不労所得を得られる」と聞き、自身の住所や氏名を「貸した」と証言。自身も偽ブランド品を愛用している一方で、自身の名義で偽ブランド品が販売されていることには全く気がついていなかった。

 偽物への抵抗感だけでなく、うまい話であれば自身の個人情報ですら易々と他人に渡してしまうという危機管理能力も欠如しているが、彼女のような感覚の人々が一定数いるからこそ、ここが「販売ルート」として重用されていることは明らかだろう。販売ルートが多岐に亘れば、逆説的に、偽物を作る連中も増えてしまうという現象が起きている可能性も考えられる。

 ちなみに、冒頭の展示会が行われていた会場の倉庫は、日本企業が工場をOEM(委託製造)のために借りていたとみられるが、中国系の貿易企業に「又貸し」している状態だった。この日本企業、中国系企業にも電話取材を試みたが双方ともに「何も知らない」というだけで、その後、着信拒否にされたのか、二度と繋がることはなかった。

 偽物ビジネスについては、世界各国が様々な対策に乗り出している。違法コピー天国と言われてきた中国や韓国でも、知財権がビジネスでいかに重要かが認識されつつあり、それが浸透しつつある。中国の金持ちは、ブランド品をわざわざ日本の正規店で購入するが、それは「日本の正規店なら本物が買える」という信頼によるものだそうだ。韓国でも、国を挙げて推し進める「Kファッション」の偽物が出てきたとして、政府も取締りを強化している。翻って我が国はどうか。偽物を受け入れる土壌も、その蔓延を黙認している環境も、気づけば他国より「緩い」、実に情けない状況になっているのではないだろうか。

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