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江戸川乱歩賞受賞『蒼天の鳥』、三上幸四郎さんインタビュー「人の弱さが強さに変わる瞬間を描きたい」

江戸川乱歩賞受賞『蒼天の鳥』

『蒼天の鳥』で江戸川乱歩賞を受賞

【著者インタビュー】三上幸四郎さん/『蒼天の鳥』/講談社/1925円

【本の内容】
 平塚らいてうや与謝野晶子が“新しい女”として話題を呼んでいた大正13年、鳥取県に住む作家・田中古代子と娘・千鳥は『探偵奇譚 ジゴマ』を観ようと劇場の最前列にいた。客席が暗闇に包まれスクリーンでは兇賊ジゴマと探偵ポーリンの対決が映し出される。そのとき舞台奥から火の手が上がり、本物の兇賊ジゴマが現れて、横に座っていた男を刺した。辛うじて逃れた2人。千鳥は言う。《「あれがほんもののジゴマなら、私と母ちゃんは名探偵ポーリンだ」》。友人で作家の尾崎翠や夫・涌島義博などの協力を得ながら、母娘は犯人を追い詰めていけるのか──。

情報をどう受け取ってどう消化し、自分の道を決めていくのか

 ミステリー作家の登竜門である江戸川乱歩賞の今年の受賞作は、大正時代の作家でシングルマザーでもある田中古代子が、娘の千鳥とともに怪盗ジゴマと闘う、異色の歴史ミステリーだ。

 小説を読むまで知らなかったが、主人公の田中古代子と千鳥は、実在の人物である。

「ほとんどの人が知らないと思います。娘の田中千鳥は7歳で亡くなっていて、千鳥の詩や文章を古代子が『千鳥遺稿』として出しています。平成の半ばごろに復刻され、千鳥の詩がすばらしいと話題になったんです。古代子と千鳥は鳥取県出身で、ぼくも米子市で生まれ育ったので、この人たちを主人公に小説を書きたいと思いました」(三上幸四郎さん・以下同)

 大学進学で上京するまで暮らしていたので、舞台となる鳥取には土地勘がある。帰省するたびに図書館で史料にあたったり、物語が展開する場所を歩いて回ったりして、準備を進めていった。

 古代子の内縁の夫である涌島も実在したジャーナリストで、古代子の友人として登場する尾崎翠はもちろん、『第七官界彷徨』の作家である。

「古代子も千鳥もとても興味深い人物ですけど、全国的にはほぼ無名なので、それだけではちょっと弱いかもしれないと思って、有名作家である尾崎翠や吉屋信子にも登場してもらっています」

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