「あんな普通に見える人が債務者になるんですね」
第4話(8月1日放送)は、「女性の貧困」あるいは「子どもの貧困」の問題がテーマとなった。
執行官の小原に頼まれて、差し押さえの現場に同行することになったひかりが立ち会ったのは、2人の保育園児を抱えるシングルマザーの自宅だった。ひかりがシングルマザーの「貧困」の現場を初めて目の当たりにし、執行官室に戻ってきてから小原たちと現在の貧困についての会話する場面──。
(吉野ひかり・執行補助者)「あんな普通に見える人が債務者になるんですね。お母さんの見た感じとか家具とかもおしゃれだったし、あんまり貧乏そうに見えなかったんで」
(小原樹・執行官)「1年執行官をやってきて。ようやくわかってきたことがある。(中略)みんな普通なんだよ。普通の人がほんの小さなきっかけや運命のボタンの掛け違いでたまたま……。本当にたまたま、債務者の立場になってしまう。何も特別じゃない」
(同僚の執行官A)「厚生労働省の調査では、母子世帯のおよそ9割が『生活が苦しい』と感じているらしいよ」
(同僚の執行官B)「ここに至るまでの間に、もっと相談できる人が身近にいればよかったんだろうけどな……」
(同僚の執行官室事務員)「世間も悪いですよ。ちょっと困れば気軽にお金を借りられるような世の中になっているんですから」
ドラマでは、最初の執行の場面では少しずつでも借金を返済すると誓ったシングルマザーがその後、家財ごと行方をくらまし、債権の強制執行はできずに終わってしまう。その後、小原たちは別のアパートでそのシングルマザーを見つけて、ついに強制執行を実施することになる。覚悟を決めたシングルマザーが本音の言葉を漏らす。
(シングルマザー)「あーあ、子どもに不憫な思い、させたくなかったんだけどなあ。父親がいないかわいそうな子だなんて、絶対思わせたくなかったのに……。あなた、独身?」
(ひかり)「はい」
(シングルマザー)「結婚だけは絶対にやめておきなよ。今の日本で結婚しても女にとって何もいいことないから……。上の子が赤ちゃんの頃ね、やっと寝かしつけたと思ったら、旦那が帰ってきて、『ごはん、まだ〜?』だって……。殺してやろうかと思った。身体も心も限界で、たまの休みの日に、『きついから、お願いだから、手伝って!』と頼んだの。そしたら(旦那は)『へー育児、楽しめないんだ〜』って……。『週に1回の休みくらい好きにさせてよ』って……。ふざけるなよ。あんたと結婚してから私にいつ休みがあったっていうんだよ」
劇中とはいえ、シングルマザーが漏らす身の上話は、育児も家事労働も女性にまかせ放しの日本人男性の姿を言い当てているようで身につまされる。
(シングルマザー)「で、気づいたの。(夫なんて)いない方がましだって。『借金なんかするなら、離婚しなきゃよかったのよ』って親に言われたけど、離婚は私の人生でベストの選択でしょ。どれだけつらくても死ぬほど誰かを恨まずにすむもの……。あー、でも……限界か。口惜しいなあ」
シングルマザーは借金を背負ってでも、夫なしで1人で子育てを成し遂げる、という生活を断念したのか、いつも右手の薬指にしていた指輪を「これも(動産執行を)お願いします」と小原に手渡す。彼女がはめていた指輪は、夫なしでも堂々と世間並みに子育てをしているというプライドの表れだったのだろうか。