芸能

誰もが債務者になり得る時代…伊藤沙莉『シッコウ!!』が描く「シングルマザーの貧困」「学生の貧困」のリアル

『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

 子どもの貧困、学生の貧困、ひとり親家庭の貧困──本来、社会的に庇護される立場であるはずの人々が陥っているとされる現代の「貧困」は、どのような実態を伴っているのか。近著『メディアは「貧困」をどう伝えたか』で現代の貧困報道のありようをつぶさに検証したジャーナリスト・水島宏明氏(上智大学文学部新聞学科教授)は、今夏テレビ朝日系列で放送された伊藤沙莉主演の連続ドラマ『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』のなかで、そうした「見えにくい貧困」が巧みに描写されていたと評する。水島氏が解説する。(以下、作品内容に関する記述を含みますので、未見の方はご注意ください)

 * * *
 コロナ禍以降、急激な物価高のために生活に困窮する人たちがじわじわ増えているのを感じる。学生たちとボランティアでたまに行く食料配付の支援の現場では行列の長さが日を追って長くなっている。それだけ今、日本社会では生活に苦しむ人たちが増えていて、「貧困」がますます広がっているという実感をもつ。

 筆者は現在、大学教員として若者たちにジャーナリズム、なかでも「テレビ報道」について教えている立場だ。かつてはテレビ局で「貧困」についての報道に関わっていたため、現在も「貧困」の報道が専門分野になっている。テレビ局勤務時代はニュースやドキュメンタリーの取材や制作にかかわっていたのでドラマは専門外だが、最近、ドラマの中でとても気になっている番組がある。

 テレビ朝日で放送されている『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』だ。このドラマのなかでは様々な「貧困」がとてもリアルに描かれている。若手の注目女優である伊藤沙莉が主演ということもあって見どころが随所にあるドラマだ。

 民事裁判で確定判決に沿って債務者が債務を履行しない場合、財産などを差し押さえて競売にかけるなどの「強制執行」を行う執行官とその補助者が主人公だ。毎回のように「女性の貧困」や「学生の貧困」という切実な社会問題が背景になっているエピソードが丁寧に描かれている。

 主人公の吉野ひかり(伊藤沙莉)は生活が苦しい家庭に育った女性だ。幼い頃から犬が好きで上京した後はペットショップに勤めていたが、その会社が倒産。裁判所の執行官の小原樹(織田裕二)と関わりを持つことになる。犬が苦手な小原から執行補助者として仕事を手伝うことを求められ、様々な「執行」に関わるようになるなかで法律が多くの人間を平等に守るものだと痛感するようになる。ひかりは次第に「執行官」になりたいという夢を抱くようになる──そんなあらすじだが、筆者が「貧困のリアル」との関連で特に印象に残った放送回を、セリフのやりとりなどを通じて紹介したい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン