第8話より(テレビ朝日)

第8話より(テレビ朝日)

 ドラマに登場した高額な「あやしい投資術の伝授」の存在も、筆者は学生たちからたまに聞くことがある。ドラマに登場したような「先輩」は実際に存在するのだ。ある学生の体験談は次のようなものだった。

 儲かる投資術を知っているという「先輩」と話していて、本人が「興味がある」ような素振りを見せたところ、別の日に高級ホテルのカフェで投資の「会社の人」を紹介されて会うことになった。数十万円を先に払っておけば「絶対に儲かる」という投資方法を伝授するので簡単に儲かると誘われた。その際に「会社の人」である男女に「二度とないチャンス」などと言われて迷ったという。

 何人かに囲まれて「NO」と言えないような雰囲気。しかも「今だけしかチャンスはない」と言われて心が動いて契約しそうになったという。紹介してくれた「先輩」のことも頭をよぎって断ることにはためらいがあったという。当該の学生は最終的には「詐欺かもしれない」と気がついて断ったというが、こうした投資詐欺は学生同士の人間関係をからめてくるのでなかなかやっかいだ。

 ドラマに話を戻そう。男子学生の先輩との投資話はその場を通りかかった友人が杏奈に声をかけたことで中断する。だが、その友人を通して杏奈は新たなワナに落ちそうになってしまう。

(友人)「あの先輩、たぶん詐欺だよ。他にもだまされたと言っていた子いたもの」
(杏奈)「うそでしょう?じゃあ、お金戻ってこないじゃん」
(友人)「いくら借りたの?」
(杏奈)「30万……。最悪だよ。何回もカード会社から連絡があって、裁判所も来たし、親にもバレたし…」
(友人)「30万かあ、キツいね。5万、10万ならまだどうにかなるけど……」

 まだどうにかなる……? 友人の思わせぶりな言葉に興味をもった杏奈に「どちらかというと、友だちとかに借りるのに近い感じ……」だと言って友人がスマホを取り出して見せたのは「個人間融資掲示板★ちょぴっと融資」と書かれたネットの掲示板だった。

 これは「個人間融資」の掲示板サイトだった。見知らぬ他人同士がSNSなどでお金の貸し借りを行うことは“個人間融資”と呼ばれている。

 お金に困った人がいくら必要だと投稿すると、お金を貸したいという人から次々に連絡が入り、身分証を確認するなどした後、お金が振り込まれる仕組みだが、法外な利息を取るケースもある。貸金業法や出資法に違反するヤミ取り引きだ。2020年から2023年まで続いたコロナ禍で生活に困窮する人が増えたことで急激に増えたとされている。

「個人間融資」のなかでも、利息をとらないで代わりに性行為などを要求するものは“ひととき融資“などと呼ばれていて、一種の売春行為やセクハラ被害の温床にもなっている。

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