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乳がんで右胸全摘の作家・篠田節子さん 介護と治療の両立は「心の持ちようで乗り切れるものではない」 

乳がんで右胸全摘の作家・篠田節子さん

乳がんで右胸を全摘した篠田節子さん

「正直なことを言ってしまうと、診断されたときにまず感じたのは『ああ、うまくいけば死ねる。逃げられる』ということ。ほっとした気持ちもありました」。直木賞作家の篠田節子さん(67)に乳がんが見つかったのは2018年の春。認知症の母が施設に入所し、ようやく一息ついた矢先のことだった。

「それまでは実家から徒歩3分のマンションに住み、母から連絡があったらすぐに駆けつけるという“見守り”の日々。母がデイサービスやヘルパーさんといった外部の人たちとのかかわりを嫌がったこともあり、目が離せない状態でしたが、母の手が離れたことで乳房の違和感を覚えたときにすぐに乳腺クリニックを受診できました。

 結果は乳がん。認知症がどういうものか目の当たりにしていましたし、老いた先に何があるかもわかっているので告知されたときは『介護からも、自分が長生きした場合に起こりうるさまざまな問題からも解放される』と思ったんです」(篠田さん・以下同)

 しかし、現代においてがんは「治療すれば治る病気」。

「最初に足を運んだ乳腺クリニックの先生はこれ以上ないくらい誠実に説明をしてくださったし、手術や治療を担当してくれた医師やスタッフのかたみなさんが、がんを普通の病気と同じようにフラットにとらえ、治療のためのさまざまな選択肢を提示してくれた。おかげで悩む暇もなく、合理的に判断し納得して治療を受けることができました」

 その結果、右胸を全摘することが決まった。

「あったものがなくなるのはショックではあるけれど、以前に乳がんの手術を受けて、いまは元気にしている友達が何人もいて、彼女たちと話したことが何より心の支えになりました。

 以前から壮行会と称して、がんの手術を控えた友人を囲んで食事会をしたり、私も子宮筋腫の手術の前には『おいしいものをおごるわよ』とごちそうしてもらったりしていました。みんな知性も常識もある大人ですから、怪しい治療やスピリチュアルをすすめる人はいません。お互いに困ったときに助け合い、“親自慢”と称して親の介護の大変さを吐き出したりするようなオープンな関係です。自分の病気に関する情報開示は人それぞれですが、それで力づけられる人間関係が持てれば幸せかなと思っています」

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