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元ジョッキーの現役調教師・蛯名正義氏が見る、ジョッキーの持ち味と「伸びしろ」

コロナ禍の競馬界を振り返る

通算2541勝をあげた名手・蛯名正義氏

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、ジョッキーの持ち味についてお届けする。

 * * *
 開業1年半の今の段階で調教師としての僕の強みは何かと訊かれたら、やはりジョッキーとして、さまざまな馬に乗ってきた経験があるということかもしれません。逆に言えばそれしかないです(笑)。2541勝の中には、なかなか勝てなかったけれど、僕が乗ったことでピンとくることがあったり、その馬の特長を感じ取ったりして乗り方を考え、結果につなげられたこともあったはず。そういう感性は調教師としても活かしたいところです。

 ただ、これを言葉でいうのがなかなか難しい。あくまで感覚的なこと。こういう馬だと思って乗ってみたらちょっと違った、それだったらこうしたら……というようなものなのです。1頭1頭違いますし、ジョッキーにあまり先入観を与えないように、癖とか気になる部分だけを伝えるようにします。でも話しているうちに、(絶対的なものとは言えないけれど)感じたことを分かってくれているような時もあります。僕が騎手出身の先生の馬に乗る時もそうでした。ちょっとした言い方でなるほどと感じたことがありました。

 リーディング上位のジョッキーは総合力が高いので、どの馬に乗ってもある程度の結果を出せる確率が高い。出遅れた時や掛かってしまった時など冷静に対応しているのを見ると、「お~、さすがだなあ」と思います。引き出しが多いからどんな馬でも乗りこなせるのです。

 逆に「私はこういう馬しか結果を出せません」という自分の型にはめたいタイプの騎手は、不器用な感じはしますが、実はそれも一つの武器。そのジョッキーが持っている型にはめたほうがいい馬ならば依頼してみたいですよね。現役時代からいろいろなジョッキーの乗り方を見ているので、こういう癖のある馬にはあのジョッキーが合うんじゃないかというのは把握しているつもりです。

 とはいえ、馬主さんは空いているならリーディング上位ジョッキーに乗ってもらいたいと思うでしょう。それを「いや、この馬はこういう馬だから、このジョッキーが合うんです」と自分の意見を言って信頼してもらえるよう、今は僕自身が結果を出していかなければなりません。

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