年下にムッとしたら「老害」の気?
一方、仕事で「自分より若い社員が逆らってくる」ことにムッとするようなら、少し「老害」の気があるかもしれません。それは、「年下なら素直に従うべき」と思っていることの裏返しだからです。
定年後に多いパターンは、再雇用後にもともと部下だった人が上役になるケースでしょう。こちらがもう上司ではないのをいいことに、相手がぞんざいな態度をとる、タメ口をきいてくる、という話は多く聞かれます。
しかし、自分より年齢や年次が下だからといって、相手を支配できると考えるのは大きな間違いです。むしろ、先輩として彼らに教えられることがあれば、その都度教えればよく、常に偉そうにする必要もないのです。
若い人が「自分に逆らってくる」「生意気な口をきいてくる」などは実際に起こり得ることだと思いますが、それが気に入らない、という場合は要注意。ちょっと老害的だと思います。
定年後に再雇用を選ぶなら、役職を離れて社内のいろんな立場の人と対等になったことを、むしろ喜ばないといけません。心理学者のアルフレッド・アドラーが言う、人間関係を円滑にするのに有利な「横の関係」を作れる状態になったのですから。
医師である私の場合がまさにそうで、患者さんやスタッフからいつまでも「先生」と呼ばれていたら、人間が腐るんじゃないかと心配をしている今日この頃です。(了)
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。