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【病院で“病気が作られる”事例】時代遅れの自治体によるがん検診、マンモグラフィー、メタボ健診…それぞれの問題点

日頃健康な人なら、熱が出てもすぐに病院に行く必要はない(写真/PIXTA)

日頃健康な人なら、熱が出てもすぐに病院に行く必要はない(写真/PIXTA)

 体調が悪ければ、すぐに病院に──誰でも必要なとき、すぐに病院にアクセスできるのは素晴らしいことだが、弊害もあることを忘れてはいけない。病院に行くことで、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症にかかる確率があがる懸念もあるのだ。さらに病院に行くことで“病気がつくられる”事例もある。神奈川県の会社員・Yさん(51才)が言う。

「認知症の義父が高血圧と診断されて降圧剤を処方されているのですが、最近はむしろ、血圧が下がりすぎてしまって、低血圧でつらそうです。だいたい、血圧が高いのは病院で検査したときだけで、自宅で測ると病院よりも30〜40mmHgも低い。どうやら、お医者さんや看護師さんの白衣を見ると緊張して、血圧が上がっていたみたいなんです」

 病院にいることで緊張して血圧が上がってしまう「白衣性高血圧」は珍しい症状ではなく、病院で数値を測ったばかりに、本来なら治療の必要はない人が患者にされてしまうケースは決して少なくない。

 早期発見・治療が命を左右するとされる「がん」も、すべての検診が有益というわけではない。ジャーナリストの岩澤倫彦さんは、「自治体が実施するがん検診には、時代遅れのものが多い」と指摘する。

「昭和時代に開発されたバリウム検査は、精度の低さや見落としがあるため“毎年受診していたのに、あるとき突然進行がんが見つかった”といった悲劇が後を絶ちません。胃がんの発見率は、バリウムよりも内視鏡検査の方が3倍も高い。また検査時にのむバリウム溶液を誤嚥して肺炎になったり、腸内で固まって穴があく(消化管穿孔)など、検査による事故も少なからず起きています」(岩澤さん)

 加えてバリウムは、撮影方法や装置によって数値に幅はあるものの、ほかのX線検査と比べて被ばくのリスクが高いことも知っておきたい。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんは言う。

「胸部X線検査と比べたバリウム検査の被ばく量は6〜1000倍にもなります。精度が低いうえに被ばくによる発がんリスクが懸念される以上、進んで受けるべき検査ではありません」(岡田さん)

 日本では40才以降に推奨される乳がんマンモグラフィーも、海外では事情が異なる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。

「米国予防医学専門委員会は、50代以上の女性に対して1〜2年に1回のマンモグラフィーを推奨していますが、一方で40代には『選択的な』推奨としています。その理由は、本当は陰性なのに誤って陽性と診断される『偽陽性』になる確率が高く、不必要な治療を受けるリスクがあるからです」(室井さん)

 そもそも、日本人女性はマンモグラフィーではがんが見つかりにくい人の方が多いという指摘もある。

「日本人女性の7割が乳腺の多い『デンスブレスト(高濃度乳房)』なので、マンモグラフィー検査では密集した乳腺にがんが隠れて見つからないケースがあります。超音波検査と併用するべきですし、『無痛MRI乳がん検診』は、確実に早期乳がんを発見できるといわれています」(岩澤さん)

 女性特有のがんの検査は、受けること自体にリスクがあるものも少なくない。中でも卵巣がん検診は、アメリカでは「受けるべきではない」とされているという。

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