国内

乱発されるディープフェイク動画 投資を促す広告をクリックするとどうなるか

ディープフェイク動画の一例。ウクライナのゼレンスキー大統領が投降を呼びかけており、Facebookを運営するメタ社の情報セキュリティ担当者が、この動画はフェイクであると注意喚起を行った(AFP=時事)

ディープフェイク動画の一例。ウクライナのゼレンスキー大統領が投降を呼びかけており、Facebookを運営するメタ社の情報セキュリティ担当者が、この動画はフェイクであると注意喚起を行った(AFP=時事)

 ウクライナのゼレンスキー大統領を利用したディープフェイク動画が、SNS経由で世界中に拡散されたのは2022年始めのことだった。AIの機械学習を活用して映像や音声を合成し作成された偽動画の存在と、その悪質さに驚かされた人も多いだろうが、日本にとってはどこか遠い世界の話と受け取っていたのではないだろうか。だが現在、日本人をターゲットにしたディープフェイク動画が作成され、SNSへの広告投稿に添付され頻出している。ライターの宮添優氏が、ディープフェイクで作成されたニュース番組映像や著名人によるスピーチ映像が添付された広告投稿についてレポートする。

 * * *
 岸田文雄首相や実在するアナウンサーの映像を用いた「ディープフェイク動画」がSNSに登場し、ほぼ全てのテレビ局や新聞社など大手マスコミが一斉に非難キャンペーンを展開している。これらの動画は、現実に放送されたニュース番組の映像を生成AIに学習させ、ディープフェイク技術で作成されたものだとみられている。騒動を取材した、民放キー局の社会部記者が説明する。

「問題のフェイク動画は、あるネットユーザーが面白半分に投稿したもので、岸田首相が卑猥な言葉を喋る内容でしたが、作り自体はとても精巧とは言えず、すぐに偽物と分かるものでした。ただし、現職の首相をネタにしたことで、官房長官が言及したり国会でも議論されるなど、民主主義の根幹を揺るがすものだと大騒ぎに。作成者は”(動画の出典である)日本テレビに謝罪したい”と慌てて方向転換しつつ、報道各社の取材を受け弁解し、なんとか反省のポーズを作っているようです」(キー局社会部記者)

 確かに、作りがいくら雑だとはいえフェイク動画が出回るのを、指を咥えて見ているだけでは、いずれ社会や民主主義を脅かすような事態になりかねず、マスコミが力を入れて「キャンペーン」を張る理由も理解できる。だが実は、岸田首相のフェイク動画が出回る1~2ヶ月前から、日本テレビのニュース番組を悪用した複数のディープフェイク動画がSNSに出回っていた。前述の記者が続ける。

「日テレのニュースを悪用したフェイク動画では、現実の局アナが投資を勧めるような内容に改変されており、より悪質でした。また、ここでも岸田首相の映像が使われていた。被害者がいなければ良いと思う一方、映像の中には天皇陛下のディープフェイクまで含まれていたため、これは外国人によって作られたものではないかという見方が拡まっています」(キー局社会部記者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン