芸能

ビートたけしが“ゆとり”を失った社会へ直言「効率を追い求めて、道を踏み外す若者たちが心配だ」

日本社会の問題を指摘したビートたけし氏(撮影/松田忠雄)

日本社会の問題を指摘したビートたけし氏(撮影/松田忠雄)

 急速に進む情報化社会で、忙しない現代人の生活は仕事、健康、娯楽……あらゆる面で「効率重視」になった。だが、“ムダ”を許さない余裕なき社会は、心の「ゆとり」も奪ってしまった。最新刊『ニッポンが壊れる』で日本社会の問題点を指摘している映画監督・タレントのビートたけし氏(76)が、『週刊ポスト』の取材のなかでスマホが普及したことによる日本人への影響について緊急提言した。【前後編の前編。後編を読む】

 * * *

 一年が終わりに差しかかろうという時に、政治の世界では「政治資金パーティー」の裏金にまつわる話がジャンジャン溢れ出てきた。政治家という生き物はいかにセコい“慣習”を続けてきたかと呆れちまうけど、まァ、こんなことは昔からあったことだ。

 むしろ、なぜこのタイミングでメスが入ったのか。わからないが、“時代の変わり目”ということなのかもしれない。たしかに政治の世界だけでなく、この数年で世の中は随分と変わったように思う。

 オイラが感じるのは、最近のニッポン人には「ゆとり」がないということだ。

 それはやっぱり「スマホ」の影響が大きいだろう。あらゆる情報がいつでも見られて便利になったけど、“弊害”もある。スマホの「通信障害」で大パニックになったことがあったよな。あの騒動で「つながって当たり前」という世界がいかに脆いモノかが炙りだされた。国民全員からスマホを1日取りあげたらどうなっちまうんだろう。

 昔はそんなものがなくても街をテキトーに歩きながら店を見つけたし、ちょっと寄り道をすることで新たな発見をすることもあった。そういう“ムダ”がなくなっている。

 「本質的な部分が弱った」

 これは「乗り物」の発明も同じだ。電車や車で移動はラクになったけど、足腰は確実に弱くなった。昔はカネを稼ぐために身体を動かしたのが、カネを使ってジムに通う時代になった。便利さと引き換えに、本質的な部分が弱ってしまった。

 仕事に関しても、ラクしてカネを稼ぎたい──そう考える若者が増えているようだけど、そこにも矛盾が生じている。若者がネット上のSNSに書き込まれた「闇バイト」と呼ばれる“求人募集”に応募して強盗に加担する事件が続いた。

 コイツラは自分たちがカモにされていることに気づいていない。リスクだけ背負わされて、もらえるギャラは雀の涙だろう。割に合わない役回りを押しつけられて犯罪者になるのは“ラク”とは真逆のはずだ。

 同じように暗号資産やあり得ない金利の投資詐欺に引っかかるヤツが後を絶たない。今時「ネズミ講」みたいな話に引っかかるのも、「ラクして稼ぐ」という考えが歪んだ方向に増長されてしまった結果だろう。

 ある詐欺グループが、居場所がバレないように「12時間ずっと高速を車でグルグル運転してた」って話には笑っちまった。そんなことをするくらいなら、真面目にアマゾンのトラック配達員になったほうが感謝されるし、よっぽど稼げるんじゃないかってさ(笑)。

 効率を追い求めるばかりに、愚かな選択をしてしまう。そんな若者が増えていることが心配だ。

後編に続く)

ニッポンが壊れる

ニッポンが壊れる
Amazonから購入

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン