事件数日前、被告は好意を抱いたCさんに交際を申し込んだが、LINEで断わられ、その理由を問いただしたものの返信がこなかったことから「絶望や怒りを感じ、自暴自棄になった。将来を考えるともう生きていたくないと思うようになり、逃げ出そうと思った。逃げるなら、かねてより興味があった拷問をしてみたい。Cさんが自分のことを忘れられなくなるように拉致して拷問したいと考えるようになり、ペンチで爪を剥ぎ、ナイフで体を刺したい、ホームパンチャーで体に針を刺そうと考え準備した」(判決より)という。
ところが事件直前には「Cさんと同性の友人のハグを目撃」(同)したことから「怒りを覚えたが、車を追跡し自宅を突き止め、Cさん以外の家族を全員殺し、Cさんを拉致し、心身に大きな傷を与え自分のことを忘れられないように」しようと計画を変更した。当時被告は、Cさんが異性とハグをしているのだと思い込んでいたという。
犯行まで、ガスボンベやオイル、ライターなど購入し続け、「声帯除去 人間」「人間 声出せなくする」といったキーワードでスマホ検索したり、火事で燃えやすいものについても調べるなどして犯行に及んだ。Cさんの妹・Dさんの命が助かったのは、被告が「後からでも殺せる、まず両親から殺そう」(検察側冒頭陳述より)と計画立てていたからだった。その隙に姉妹は住宅2階から飛び降り、夜中のコンビニに駆け込んで助けを求めた。
「本当のことを話す」
こうした犯行内容について、遠藤被告は法廷で詳細を語ることはなかった。2023年11月13日の被告人質問では、ほとんどの質問に黙秘を貫き、答えない理由を弁護人に問われた際は「社会に戻るつもりがないからです」と述べた。このため証拠採用されたのが、逮捕当時、また鑑定留置後に聴取された被告の調書である。これらの調書から、被告の犯行への執念、Cさんへの筋違いの恨み、そして計算高さが浮き彫りとなった。
まず逮捕当初、被告は「Cさんへの拉致拷問」の計画は伏せ、「Cさんの家族『全員』を殺すつもりだった」と語っていた。
「通報させず、逃さず、確実に殺すため、全員を殺すことを決めた」(逮捕当時の調書)
また当時は被害者家族への謝罪の言葉も述べていた。
「今回したことは本当に申し訳ない思い。その思いはずっと変わらず、今もその思いだけです」(同)
ところが鑑定留置後の調書では一転し、計画に「Cさんへの拉致拷問」があったことを認め、Cさんだけを生かして連れ去る目的があったことを明かしたのだった。
「鑑定前まで、罪を軽くしたいという思いから嘘をついていたが、軽くする気がなくなった。本当のことを話す」(鑑定留置後の調書)