国内

スルメイカ激減、イルカ座礁、熊の凶暴化、ラジオのノイズ…地震に“予兆”は存在するのか、地球物理学者が解説

イルカ150頭が打ち上げられた茨城県の海岸。(’15年4月、アフロ)

イルカ150頭が打ち上げられた茨城県の海岸。(2015年4月、アフロ)

 能登半島地震の発生から1か月が経とうとしている。元日に発生した最大震度7の大地震は1万棟以上の家屋を倒壊させ、土砂災害や津波を引き起こした。石川県内ではこれまでに233人の死亡が確認されており、22人が安否不明のままだ(1月22日時点)。厳しい寒さが続くなか、いまも1万人以上の被災者が避難所での生活を余儀なくされている。

 元日の出来事ゆえ、帰省時や旅行中に被災した人も少なくなかった。“大地震はいつ発生してもおかしくない”──そう改めて痛感した人も多かっただろう。被災地に刻まれた深い傷痕を目にすると、“もし大地震の発生が予測できたなら……”という期待を抱きたくなる。

 地震多発列島に暮らしてきた日本人は、昔からさまざまな自然現象を大地震と関連づけて「予兆」や「虫の知らせ」などと言い表してきた。実際、昨年以降、日本列島では数々の異変が起きており、なかには能登半島地震の予兆とも考えられる事象もあった。

スルメイカ激減 イワシ大量死

 大地震の予兆としてよく知られているのが、「海の生物」の異常行動だ。能登半島がある石川県の沿岸では近年、「スルメイカ」が激減しており、県の水産総合センターの発表によると、昨年の水揚げ量は過去10年間で最少だったという。武蔵野学院大学特任教授で地球物理学者の島村英紀さんが解説する。

「海中生物は人間よりもはるかに優れた“地震センサー”のようなものを持っています。大地震が発生する前に、海底ではプレート同士が押し合ったり、ぶつかり合ったりしているのですが、その際の摩擦で『地電流』(地中を流れる電流)や『地磁気』(磁場)が生じているという研究結果があります。

 それらは人間の力では感知できない微弱な変化ですが、優れたセンサーを持つ海中生物であれば感知できるのかもしれません。それが生態に何らかの影響を及ぼし、不漁につながっている可能性があります」

 兵庫県の但馬地域では、特産品である「ハタハタ」の昨年の水揚げ量が前年比9割減。福島県相馬市では今年1月18日からズワイガニ漁が始まったが、例年に比べてまったく網にかからず、予定されていた初競りが中止になったほどだ。

 さらに昨年の後半からは、イワシの「謎の大量死」も目立つ。10月に熊本県天草市で大量死が発生すると、同年12月には三重県志摩市と北海道函館市で海岸を埋め尽くすほどのイワシが打ち上げられた。この現象は年明けも続き、北海道せたな町の漁港と海岸では長さ1kmにわたり魚の死骸が流れ着いた。

「海産物の不漁やイワシの大量死も、地電流や地磁気の影響を受けての可能性があります。注目すべきは、それらの報告が北海道から九州という広範囲で相次いでいる点です。日本列島の下には4枚のプレートがありますが、すべてのプレートが活発に動いている証と捉えることもできる。そうした状態になっているのだとすれば、いまは地震がいつ起きてもおかしくない“異常事態”に入ったとも言えます」(前出・島村さん)

イルカ座礁と迷いクジラ

 昨年4月には房総半島(千葉県)の海岸に30頭以上の「イルカ」が打ち上げられたが、その光景も能登半島地震と関連している可能性があるという。

「イルカは特に“センサー”が優れた生物として知られています。イルカが座礁した房総半島の東方沖には2つのプレートの境界があるのですが、近年は同海域を震源とする地震が頻発していることから、これらのプレートの動きが活発化していると考えられます。

 今回の能登半島地震も、この2つのプレートによって引き起こされたものとみられていますが、地電流や地磁気で方向感覚を狂わされたイルカが、海岸に打ち上げられてしまった可能性もある。房総半島のイルカの座礁が、能登半島地震の予兆だった可能性は否定できません」(前出・島村さん)

 イルカの異常行動は東日本大震災(2011年)の発生7日前にも確認されており、茨城県の海岸に約50頭のイルカが打ち上げられた。

 昨年1月、大阪湾の淀川河口付近にマッコウクジラが迷い込み、「淀ちゃん」と命名されたが数日後に死亡した。そうしたクジラたちの迷い込みも、イルカと同じ理屈と考えられている。能登半島地震発生後の1月17日、大阪湾を泳ぐクジラの目撃情報が相次いでいる。次なる地震の予兆なのだろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年、第27回参議委員議員選挙で使用した日本維新の会のポスター(時事通信フォト)
《本当に許せません》維新議員の”国保逃れ”疑惑で「日本維新の会」に広がる怒りの声「身を切る改革って自分たちの身じゃなかったってこと」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《広陵高校暴力問題》いまだ校長、前監督からの謝罪はなく被害生徒の父は「同じような事件の再発」を危惧 第三者委の調査はこれからで学校側は「個別の質問には対応しない」と回答
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン