自宅にはナイフやペンチ、ロープなどの工具類ほか、愛用の道具がずらり

自宅にはナイフやペンチ、ロープなどの工具類ほか、愛用の道具がずらり

「実は去年の12月30日の夜、自宅近くのT字路で事故を起こして、車の前方がぺちゃんこになってしまってね。車屋に持って行ったら『70万円くらいかかる』と言われて、今修理に出してます。事故がなければ現地に入っていたか? それはもちろん現地に行ってます。

 自分が被災地行く時は、最低1、2カ月はおるつもりやけど、2時間あったら、出発のための準備はすぐにできますから(自宅にあるナイフやペンチ、ロープなどの工具類ほか、愛用の道具などを見せる)。お手伝いしたいと、常に思っています。30日に車で事故を起こして、その2日後に地震があり、津波が来た。『何でこんな時に!』という忸怩たる思いが強くあります……」

 現在も被災地では断水をはじめ、食事の面でも厳しい状況が続いている。自衛隊のほか現地入りしたボランティアが支援を行うなか、一部ボランティアが、被災者用の炊き出しを食べたり、道路渋滞の要因となるなど、批判の声もある。

「もちろん水や食料も全部こっちから持って行きますよ。東日本大震災の時も南三陸に500日おったけど、現地の水は一滴も飲んでません。あそこは避難所の近くに志津川が流れているから、車で行って2リットルのペットボトル10本くらい水を汲んで利用した。沸騰させて飲むのか? 沸騰なんかしませんよ、当然そのまま飲みます」

 65歳で仕事を辞め、『学歴も何もない自分がここまでやってこれた。これからは社会へ恩返しをしたい』という思いから始めた尾畠さんのボランティア活動。東日本大震災では、がれきの中に埋もれた家族の写真を拾い集め、2018年には山口県で行方不明になった当時小学1年生の男児を救出。以来、「スーパーボランティア」と呼ばれるようになった。

「ボランティアは『してあげる』でなく『させてもらう』という気持ちじゃないとダメなんです。水一滴でももらってはいけないという覚悟が必要です。被災地の方に飲食を勧められても基本は断りますよ。こちらから『ちょっと水を飲ませてくれ』なんていうのはダメです。現地の人もボランティアがどんな活動をしているか見てますから」

「石ころ1つでもきれいにしたい」──84歳となったスーパーボランティアは、満を持して被災地へ向かう。

後編に続く

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