国内

【山口組分裂抗争、10年目の現在地】緊張感のない日常 六代目山口組の幹部・組員は、誰一人として命の危険を感じていない

六代目山口組の司令塔、高山清司若頭(写真/共同通信社)

六代目山口組の司令塔、高山清司若頭(写真/共同通信社)

 山口組は大抗争を繰り返すことで組織を巨大化させてきたが、今回の「山口組分裂抗争」は10年目を迎えた今も決着していない。「分裂抗争」の行く末について、フリーライター・鈴木智彦氏がレポートする。【前後編の前編。後編を読む

 * * *
 2015年8月、結成100年の節目に分裂した山口組は、その後、離脱派が神戸山口組を旗揚げして衝突、抗争状態に突入した。今年の夏で10年目と、過去最長の抗争になっているが、実質的な喧嘩はずいぶん前に終わっている。

 抗争は暴力事件が発生し、その報復が行なわれ、殺し合いが連鎖する状態を指す。が、六代目山口組側がどれだけ離脱側の幹部・組員を殺しても一向に報復が実行されない。これでは、もはや抗争ではない。旗色が悪いと組員はどんどん逃げる。結成時に参集した幹部たちも引退して去っていく。勢力差はもはや圧倒的で、大企業と個人商店ほども違う。

 ターニングポイントは2019年10月18日、六代目山口組の司令塔である高山清司若頭の出所だった。キーマンの出所を控えたこの年、沈静化していた抗争は一気に爆ぜた。

 4月、神戸市の路上で神戸山口組の中核組織・山健組の若頭が刺された。報復は4か月後の8月21日に履行され、神戸市の六代目山口組の中核組織・弘道会拠点で組員を銃撃した。

 ところが、激震に見舞われたのは報復した側の神戸山口組だった。ヒットマンの容疑者として逮捕されたのが、山健組トップの中田浩司組長だったのだ。

「まさかと思ったし、今だって信じられない。大将が出張ったらもう後がないからだ。警察はフルフェイスのヘルメットを被り、ミニバイクを運転する実行犯の防犯カメラ映像を逮捕の根拠としている」(友好団体の幹部)

 六代目山口組は苛烈な報復を加えた。

 10月10日、実話誌のカメラマンに扮したヒットマンが、山健組事務所前で2人を銃殺した。その1週間後、高山若頭が府中刑務所を出所しても報復は止まることなく、11月27日には神戸山口組幹部の古川組・古川恵一組長が買い物客でごった返した夕方の商店街でマシンガンによって射殺された。古川組長の葬儀は、私が神戸山口組のフルメンバーを見かけた最後となった。

 その後、神戸山口組は完全に沈黙、多くの幹部が引退した。最初で最後の報復を実行した山健組の中田組長は、勾留中でありながら古巣の六代目山口組に戻った。

関連記事

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト