〈偽りのトランペット〉
ノストラダムスがこれまで言い当てたとされる近現代の予言としては、「日本への原爆投下」、「ケネディ暗殺」などがある。前出、白神氏が語る。
「ノストラダムスの詩集第3巻13番には〈弓形をした船に金銀も溶かす光が落ちる〉との内容が記されています。続けて〈都市は荒廃し、艦隊も沈む〉とあり、これは日本への原爆投下を指す予言だと解釈されています。ケネディ暗殺については〈偉人の上に屋根から不幸が襲う〉〈無実の者が告発され、犯人は隠される〉といった具体的な記述が複数残されています」
さらに1999年以降も予言は続き、2011年の東日本大震災については、〈地面を揺るがせる人、大地の中心から火を噴き、新しい都市の周りを揺さぶるだろう〉(第1巻87番)、〈何日、何夜もの間、大地が揺れるだろう。春に2度の激震が続く〉(第2巻52番)といった記述が当てはまると見る研究者がいる。
この他、日本における巨大地震を的中させたとされるケースとしては、1983年5月26日に発生した「日本海中部地震」が挙げられる。M7.7のこの巨大地震は大津波を引き起こし、104人の命を奪った。
前述の五島氏は本誌『週刊ポスト』1977年の対談記事で「1983年5月に日本で大地震が起こる」と断言していた。その根拠となったのは、ノストラダムスが記した以下の記述だった。
〈太陽は金牛宮の二十度、非常に強く大地が震える〉
五島氏によれば「太陽」は日本を、「金牛宮」は占星術で4月20日から5月20日を指し、その記述が詩集の第9巻83番にあることから、年代を1983年5月と特定したのだという。
前出の白神氏は「ノストラダムスは、他にもここ数年に起きた世界的な出来事を詩集に残している」と話す。
「たとえば〈厚顔無恥で大胆な人物が、軍の統率者に選ばれるだろう〉〈狂気を隠蔽する偽りのトランペットが……〉といった記述は、2016年のトランプ大統領登場を指すものと言われています。
また新型コロナの流行については〈海辺の都市の大疫病は、死の報復が遂げられない限り止まらないだろう〉(第2巻53番)という記述がある。コロナが発生した中国湖北省武漢市は内陸に位置しますが、市の中央に長江が流れ『水の都』とも呼ばれている。世界規模の疫病発生を示唆した予言として注目されています」