馬は来ないけれど、ジョッキーは前にもまして短期免許を取って来日してくるようになりました。すべてが思い通りの成績を残せるわけではありませんが、「また来たい」というジョッキーが多いことは事実です。
彼らはみな、日本の競馬がスポーツとして成り立っていることに魅力を感じています。GIを勝った時の観衆の祝福が、これだけジョッキーに向けられる国はほかにありません。満員のスタジアムのサッカーの試合でゴールしたぐらいの反応です。あんなにスタンドが揺れるような興奮は海外ではないでしょう。
もっともそれは馬券の売り上げが多いことも影響しています。みんな馬券を買っているから熱狂するというのもありますよね。あのような高揚感は、他の国では味わえないと思います。もちろん、賞金もたくさん持ち帰れるからかもしれませんが(笑)。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。この連載をベースにした小学館新書『調教師になったトップ・ジョッキー~2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』が発売中。
※週刊ポスト2024年4月12・19日号