習い事のベストは「2個」
では、「習い事の数」についてはどうでしょうか。さまざまな研究からおすすめできる数の目安は、およそ「2個」程度といわれています。
子どもには現状を把握したり、課題や目標を設定したりする時間が必要です。多くの習い事をやっていると、その時間を確保できなくなってしまいます。次のことに挑戦するにあたって、続かなかった原因は何か、自分に足りなかったものは何かを自らに問いかける過程が、GRITの育成につながるのです。これはGRITのI(自発性)とT(執念)の部分になります。
ですから、毎日次から次へと習い事や課題に追われる日々を過ごしていると、じっくりと現状を把握したり、今後の課題や目標を設定したりする時間が足りなくなってしまうのです。
もちろん、すべての子どもにとって2個が最適な数とは限りません。習い事の種類によっては週に何日も通う必要があったり、毎日家で練習をしたりするかもしれません。子どもが現状を把握できて、余白の時間を確保できることが大切と覚えてください。
また、何もない時間や空間が大切な役割を果たすことが、カリフォルニア大学LA校の精神科教授ダニエル・シーゲル博士の研究からわかってきています。そのため、たくさんの習い事や塾に忙殺されてしまうことは、おすすめできないのです。家庭の方針や子どもの自主性とよく相談し、習い事は精査して決めましょう。もし合わないと感じたら、時期を設定して方向転換する覚悟も必要です。
(第2回へ続く)
【プロフィール】
柳澤綾子(やなぎさわ・あやこ)/医師、医学博士。東京大学医学系研究科公衆衛生学客員研究員、国立国際医療研究センター元特任研究員。麻酔科専門医指導医。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを専門としている。15年以上臨床現場の最前線に立ちながら、大学等でも研究し、海外医学専門誌(査読付)に論文を投稿。年間500本以上の医学論文に目を通し、エビデンスに基づいた最新の医療、教育、子育てに関する有益な情報を発信している。自らも二児の母であり、データに基づく論理的思考と行動を親たちに伝える講演や記事監修、執筆なども行なっている。『世界一受けたい授業』『J-WAVE TOKYO MORNINGRADIO』『VERY web』など、メディア出演、連載記事執筆多数。現在は株式会社Global Evidence Japan代表取締役として、母親目線からの健康と教育への啓発活動も精力的に行っている。著書に『身体を壊す健康法』(Gakken)がある。