LINEでのやりとりに、消去し忘れたと思われる中国語の文章が見えてしまっている(筆者提供)
多くの場合、このときLINEで繋がる相手は、クリックした偽広告に登場する著名人を名乗るユーザーである。筆者は様々な偽広告をクリックしまくったが、前澤氏や堀江氏はもちろん、楽天の三木谷浩史氏やソフトバンクの孫正義氏と称するユーザーらともやり取りをした。もちろん、彼らが本人だと思ってはいないが、理解していてもやり取りを続けてるうち”まさか本物じゃないよな”と妙な気分になってしまう。それほど、有名人の威光というのは、庶民に深く刷り込まれているのだ。「あやしい」と感じながら被害に遭った人も多く、被害者の心理にその威光が影響していることを物語っているのかと思う。
ここから、また高い確率で「アシスタント」を名乗る女性、および男性を紹介される。例えば、自称前澤氏がいきなり「私のアシスタントが、あなたの投資を全てサポートします」などといって、アシスタントとやり取りをするよう促される。ほぼ同時に、この自称前澤氏が主宰するという、投資に関するLINEグループにも追加される。
LINEグループには、数十から100人程度のメンバーが既にいて、自称前澤氏の投稿に「素晴らしい」「ありがたい情報だ」と大絶賛したり、生々しい現金や大きな額が預けられた通帳の写真をアップして「200万円を投資してきた」といった、一見すると投資家グループのやり取りが展開される。
後述するが、これらのやりとりはAIなどを使って巧みに作り上げられた、会話に見える自動投稿の可能性が高いと思われる。LINEグループに加えられた筆者だけを狙い撃ちにすることが目的の、詐欺師の罠なのだ。筆者は、騙されたふりをしてみたり、急に口調を変えたりして相手を翻弄しようとしたが、実に流暢な日本語で、こちらの発言内容に応じた反応がすぐに返ってくるなど、確かに人がやっているのかAIがやっているのか全くわからない。
LINEでのやりとりで垣間見えた「中国の影」
会話は自動投稿と指摘したが、やりとりしている相手が「人ではないのか」と思ったことが一度だけあった。それは、投資グループの中の日本人女性(風)の書き込みだった。中国語と思われる記述の下に、その日本語訳が記されていた。つまり、中国語を日本語に機械変換していたが、元の中国語も含めてコピペしてしまった、という風に解釈ができるだろう。
「中国の影」を感じるのはこれだけではない。まず偽広告に使われているフォントの多くが、日本語ではあるものの中国国内で使われるフォントになっていることは、大きな特徴といってよい。確かに日本語として表示されているのだが、ひらがなが不自然な形だったり、たとえば漢字の「才」がカタカナの「オ」のような字で表示されるなど、簡体字が多く混じっているのだ。さらに、ランディングページのページ情報(ソース)を確認すると、そこにもちらほら、簡体字による記述が散見される。