アジアを拠点とする特殊詐欺の摘発も増えている。カンボジア・プノンペンのアパートから押収された携帯電話など。2023年11月(イメージ、時事通信フォト)
もちろん他にも様々なパターンがあるだろうが、最終的には必ず、自分に専属の誘導を行う存在、この「アシスタント」に直接投資を促されるのが典型であるようだ。
たとえば、アシスタントから架空の投資サイトを紹介され、そこでアカウントを作り、何らかの形(銀行口座、送金サービスなど)で金を入金するようすすめられる。この誘導も巧妙で、アシスタントに言われるがまま買った株などの投資商品の価格は、架空の投資サイト上にリアルタイムで表示され、これが、毎日、毎時間のようにぐんぐん伸びていくのだ。自分の投資が成功していると思い込まされた被害者は、さらに種銭を準備して大きく儲けたいと考えるようになるし、アシスタントからも「今がチャンス」「残りの人生は遊んで暮らせる」などと煽られるのである。もちろん、サイトに表示される価格上昇の表示は、何の根拠もない架空のものだ。それを信じて振り込んだら、どうなるかは分かりきったことだろう。
以上が、筆者の検証だ。1円でも金を払ったが最後。残念ながら、詐欺師たちが捕まる可能性は現状においてゼロといってよく、従って被害金を取り戻すことも絶望的である。当然、偽広告詐欺師たちにとってはリスクの低い”仕事”となるわけで、偽広告の勢いが止まることはない。
自称著名人アカウントやアシスタントの元“中の人”たち
「現地の人たちは詐欺というより遊びに近い感覚、アルバイトでやってます。昔は日本人がたくさんいたけど、今は翻訳ソフトの機能も上がり、現地の人たちを安く雇っている」
こう話すのは、かつて東南アジアに拠点を置き、その後摘発された特殊詐欺集団の”頭領”と親交のあった、元暴力団員のN氏だ。偽広告の作成には、中国の反社グループや、東南アジア各国の反社組織が関与しているとういう。
「日本でも”オレオレ詐欺”が流行っていますが、中国でも同様に、東南アジアなどの海外に拠点をおき、中国国内に電話をかけて詐欺を働く人たちが数多くいました。ただ、それは中国国内の経済が良かった時の話で、彼らのターゲットは言葉が同じ台湾、そして日本に移っていった。彼らの仕事のうちの一つが偽広告詐欺で、広告制作には日本人も絡んでいる。例えば、この著名人なら日本人が信用しやすいとか、日本語の添削をすることもあります。そこで働くのはタイ人やカンボジア人など東南アジア系の人たち。日本の若者のように、闇バイトで連れてこられた人もいれば、現地の司法当局と癒着によってマフィアが堂々”ビジネス”としてやっているパターンもあると聞きます」(N氏)
偽広告の温床となっているプラットフォーム側が、こうした現状にどこまで本気で対峙し、問題解決に動くかは未知数である。最後に付け加えておくと、つい最近はX(旧Twitter)においても、有名人を騙る偽アカウントが散見され、やはりここで紹介したような投資詐欺へと誘導されるもようだ。プラットフォームが変わっても、オレオレ詐欺など従来の犯罪と比較しても足がつきにくく、費用もかからない偽広告詐欺、そしてなりすまし系の詐欺は、今なお犯罪組織にとって非常に使い勝手が良いものである事実だけは変わらない。
