著名人の画像や動画をねつ造した虚偽の広告はSNS全般にみられるが、とくにフェイスブックとインスタグラムに目立って多い(イメージ、AFP=時事)

著名人の画像や動画をねつ造した虚偽の広告はSNS全般にみられるが、とくにフェイスブックとインスタグラムに目立って多い(イメージ、AFP=時事)

 そして、これらの偽広告から誘導された先のページにはさらに、それぞれ広告主(スポンサー)がいる。ところが、偽とはいえ投資情報や金融情報の広告を出しているスポンサーが、なぜか東南アジアの花屋だったり、北欧の自動車工場だったり首を傾げるようなところばかりだなのだ。表示された広告主たちに、なぜ広告を出稿しているのか連絡がとれる限り確認をとったが、名前を無断で使われていたり、アカウントを乗っ取られていたり、稀に「報酬をもらってアカウントを貸している」と答えた広告主もいた。だが、いちばん知りたい、最初にSNSで表示された偽広告の主は見つからない。

 疑念を抱きつつLINEグループ上でのやりとりを続けるが、実に活発に投資に関する議論が行われることに驚く。それがAIを使ったものにせよ、中国語を日本語に翻訳したものにせよ、当日の日経平均株価に関してや、その日に起きた世界的な経済ニュースに関する会話が繰り広げられる。実在する数字や出来事をベースにした、極めて最近の話題に関する会話が進められるため、まるで、実在する投資グループの中にいるような錯覚に陥ってしまう。

 そのうち、自称前澤氏がグループメンバーのために作成したという投資の指南書が、PDFで配布される。この資料にもグループでの他メンバーからの投稿と同じく中国フォントが踊り、内容は粗末なもので、中学生の娘が学校の授業で作ったレポートの方が随分マシともいえるレベルだ。もちろん、メンバーはこの粗末な資料も手放しで絶賛。そしてまたしばらく経つと、今度は実際に「投資をした」というメンバーが次々と現れる。

 中には、銀行の取引明細の写真とともに「数百万を下ろしてきて投資に回した」と投稿するメンバーもいた。明細には、確かにその当日のわずか数十分前になっている取引時刻が印刷されている。だが、写真をダウンロードして色味の調整をすると、合成であることが一目瞭然だ。

専属のアシスタントが親身に相談にのる

 LINEグループでの大勢のユーザーたちのやりとりとは別に、自称前澤氏のアシスタントを名乗るユーザーと一対一でのやり取りも並行して行われる。アシスタントは、こちら側の経済状況などを詳しく、そしてしつこく聞いてくるが、人生相談に乗ってくれることもある。例えば「今すぐ楽に大金が欲しい、犯罪でも厭わない」と筆者が書き込んだところ、そんなことで身を破滅させるべきではないとか、勉強して明るい人生を思い描こう、など励まされた。要は、こちらの発言に対して何一つ嫌な態度を示さず、淡々と粛々と、相手をしてくれるのだ。

 このアシスタントからは、「テレビ電話でも大丈夫」と驚くべき提案をされたこともあった。どんな顔の人が出てくるのか気になったので応じたところ、画面の向こうには、不自然な日本人風の女性のような顔が不鮮明に映し出されていた。あまりに不自然で、AIのアバターであることが簡単に推察できた。

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