国内

《「ほぼ裸」ポスターや立候補しない女性格闘家も》都知事選の選挙ポスター問題 「おそろしい時代」「恥ずかしい」と嘆く大人に「あたおか」と笑う小学生たち

問題となった「ほぼ裸」ポスターを貼る、モデルの桜井MIU(SNSより)

問題となった「ほぼ裸」ポスターを貼る、モデルの桜井MIU(SNSより)

 2024年東京都知事選挙で東京都選挙管理委員会が事前に用意した掲示板のポスターを貼るスペースは48人分。ところが過去最多の56人が立候補したため足りなくなってしまった。56人全員が本気で当選を目指しているのであれば意義深い選挙となるだろうが、掲示板に並ぶポスターを見ると、そのような意識が希薄としか思えない候補者もいる。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、選挙に寄せる人々の思いを聞いた。

 * * *
「これがいまの東京なんですね」

 都内の東京都知事選のポスター掲示板を前に、80代の女性は足を止めてつぶやいた。6月20日、ついに東京都知事選が告示された。立候補者は過去最多、56人。掲示板スペースは48人分、もちろん1人1枚であっても足りない、前代未聞の選挙となった。

「おそろしい時代になったのですね」

 彼女と筆者とはもう随分と長いお付き合い、彼女の人生――子どものころ空襲に遭った、女子大を出て教師になった、ずっとこの東京に生きて、昭和・平成・令和と生きてきた。

 彼女が「おそろしい」と語るポスター掲示板、後ろで小学生たちがポスター掲示板を指して「あたおか」と笑っている。ネットスラングで使われる言葉、その意味はともかく、子供らに「あたおか」と笑われているのはポスター掲示板の大人たちだった。

「もうついていけません、なんだか悲しい」

 彼女は力なく笑った。

「面白いだけでいいのかしら」

 彼女の幼少期、この国の女性に参政権はなかった。そしてこの国には治安維持法があって、言論の自由もなかった。たとえば1940年からの京大俳句事件。〈戦闘機ばらのある野に逆立ちぬ〉こうした俳句を詠んだだけで俳人、仁智栄坊は特別高等警察という秘密警察、通称・特高に逮捕された。スペイン内乱の報道写真を見て詠んだ句だったが「皇国の敗戦を期待しているだろう」と言いがかりをつけられて有罪、収監された。同じく詠んだ句〈戦艦の鋼鉄の窓より白き吐瀉〉もまた「海軍をゲロまみれにして笑っている」とされた。若い水兵を詠んだ写生句だったが「天皇陛下に弓引く共産主義者」とまでされた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン