国際情報

「水と油」の関係だった夫・蒋介石と米国交渉役との間に立った宋美齢夫人の”人間力”

夫・蒋介石(左)と米国スティルウェル中将との間で笑顔を見せる宋美齢夫人(写真/時事通信フォト)

夫・蒋介石(左)と米国スティルウェル中将(右)との間で笑顔を見せる宋美齢夫人(写真/時事通信フォト)

 1937(昭和12)年から、日本が中国との戦争を続ける中で、中華民国を率いて抗日戦を指揮していた蒋介石の存在は極めて大きかった。その蒋介石を陰ながら支えるだけでなく、より積極的に米国を味方に引き寄せる活躍を見せたのが、三番目の妻・宋美齢夫人だった。流暢な英語を話す宋美齢は、単に夫の通訳という立場にとどまらず、政治・外交上でも重要な役割を担ったのだった──。

 米国在住のノンフィクション作家・譚ロ美氏(ロは王偏に「路」)の話題の新刊『宋美齢秘録』より抜粋・再構成。

 * * *
 宋美齢は、放送や演説、電報を通じて、米国を中心とした世界に対し、日本の非道と残虐性を訴えた。だが、宋美齢が対米政策で果たした役割は宣伝戦だけにとどまらない。戦局を大きく左右するような米国からの支援を引き出すことに成功している。

 その一つが、米国人パイロットによる傭兵軍団「フライング・タイガース」である。「フライング・タイガース」という名称は中国語の「飛虎」から来ているが、この傭兵軍団の獲得にも宋美齢が一役買っている。

 1935(昭和10)年、国民政府行政院に航空建設委員会(のちに航空委員会と略称)が設立された。蒋介石が委員長を兼務し、宋美齢が秘書長に就任したが、実質的な職務は彼女ひとりが行った。やがて宋美齢は「空軍の母」と呼ばれるようになり、彼女自身も、「私の空軍」と誇らしげに口にするようになった。

 中国では当初、イタリア人アドバイザーが中国人パイロットを養成していたが、効果が上がらず、機体も近代化を図る必要があった。そのため蒋介石は宋美齢を通じて、米軍からアドバイザーを雇用しようと考えた。

 1937年、盧溝橋事件から2カ月後の9月、米軍パイロットのクレア・シェンノートが中国で蒋介石と対面した。彼は44歳だったが難聴を患い、退役を決めていた。蒋介石は経験豊富なシェンノートを航空参謀長として手厚く迎え入れ、月給1000ドル(現代の日本円に換算して約1200万円)という、当時としては破格の雇用契約を結んだ。契約期間は3カ月だったが、その後、宋美齢は8年間にわたり彼との契約を延長した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト