スポーツ

【高飛込・玉井陸斗の決勝進出なるか】「飛込界のレジェンド」が語る競技の見どころ「“音”でわかる完璧な入水」「国際試合でも“えこひいき”がある」

2022年の世界水泳選手権(ブダペスト)で日本人初の銀メダルに輝いた玉井陸斗の演技(AFP=時事)

2022年の世界水泳選手権(ブダペスト)で日本人初の銀メダルに輝いた玉井陸斗の演技(AFP=時事)

 熱戦が続くパリ五輪の水泳競技。まもなく男子高飛込の予選が始まるが、決勝進出・メダル獲得が期待されるのが、17歳にして2回目の五輪出場となる玉井陸斗選手だ。前回東京五輪では7位入賞を果たしている。その玉井選手を飛込競技の世界へと導いたのが、メルボルン、ローマ、東京と3つの五輪に出場した飛込競技界のレジェンド・馬淵かの子氏だ。

 引退後は指導者となり、審判員の資格を取得。夫とJSS宝塚スイミングスクルールを立ち上げ、寺内健など多数の五輪選手を育てた。パリ五輪の男子高飛込に出場する玉井選手もその一人。86歳の現在も指導者を続ける馬淵氏に、『審判はつらいよ』の著者・鵜飼克郎氏が飛込競技の採点ポイント、見どころなどについて聞いた。(前後編の前編。文中敬称略)

 * * *
 飛込競技には弾力性のある板を利用する板飛込と、高さ10メートルの台から跳躍する高飛込がある。男子は6本、女子は5本の異なる演技を行ない、フォームの美しさと演技の正確さを競う。

 その演技を7人の審判員(日本選手権以外の国内大会は5人でも認められている)が「踏み切り」「空中姿勢」「入水の技術や美しさ」で総合評価し、演技全体の印象を10点満点で採点する。完璧なもの(10点)、非常に良好なもの(8.5〜9.5点)、良好なもの(7.0〜8.0点)、完成したもの(5.0〜6.5点)、未完成なもの(2.5〜4.5点)、失敗したもの(0.5〜2.0点)、まったく失敗したもの(0点)という基準だ。また、事前に提出された演技種目に応じて「難易率(難易度=難しさの割合を示す係数)」が決まっている。

 中学時代に飛込競技を始め、16歳でアジア大会に初出場。五輪にはメルボルン、ローマ、東京に出場し、引退後は指導者となり審判員資格も取得した「飛込競技界のレジェンド」馬淵かの子が言う。

「採点は10点満点からの0.5点刻みの減点法です。まず全体の印象を評価したうえで、演技内容で減点する。技には理想的な形があり、それとどの程度ズレているかで減点しますが、その基準は審判員の研修会で何度も講義を受けます。減点がなくスッと入水したら8.5点以上になります」(以下同)

 7人のうち高得点の2人と低得点の2人(審判員が5人の場合は上下各1人)を除く3人の採点を合計し、それに難易率を掛けた数字が演技の点数となる。

 難しい技に挑戦するのと、簡単な技を完璧にこなすのとでは、どちらが得点は高くなるのだろうか。

「やはり難しい技に挑戦したほうが点数は伸びやすい。近年は難易率の高い技に挑戦する傾向が強まっていて、いかに難しい技をどれだけ完璧にこなすかの勝負になっています。これは体操競技などでも同じだと思います」

 難易率は宙返り、空中姿勢、ひねり、踏み切り、入水の要素に基づき、公式によって算出される。2023年競技規則には、この要素を組み合わせた演技種目が板飛込には99種類、高飛込には134種類ある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン