防犯カメラに映った真犯人
長く住み慣れた住人さえ恐怖に耐えきれず退去する異常事態。だが浅田にはこのマンションを離れられない大きな理由があった。
「じゃあ、決まり。美代ちゃん、ここを買おう」
浅田のマンション購入は、樹木希林さん(享年75)のこの一言で決まった。浅田が17才でデビューしたドラマ『時間ですよ』(TBS系)での共演をきっかけに交流が始まった2人。2001年に最愛の母を亡くし、失意に沈む浅田に「家を買いなさい」と説いたのは樹木さんだった。
もともと樹木さんは無類の“不動産好き”で、あらゆる物件を見て回ったり、他人の家に押しかけて内覧することをライフワークにしていた。新築よりヴィンテージマンションを好み、「古いマンションは運気や立地がよく、建物の造りがしっかりしている」などと語っていたという。そんな樹木さんが「ここはすごくいいの」と購入を強くすすめたのが、現在浅田が住むマンションだ。
「当時の浅田さんは50才の手前。『まだ賃貸でいい』と渋る浅田さんに『60才過ぎたら誰も貸してくれないよ』と背中を押したのが希林さんでした。しっかり者の希林さんは浅田さんに大きな仕事があるたびにローンの繰り上げ返済をすすめ、浅田さんがローンを完済するときは銀行までついて行って、記念写真を撮ったほどです」(浅田の知人)
浅田がマンション駐車場に止めている2台の自家用車のうち1台も樹木さんにまつわるものだ。
「浅田さんの愛車『バンデン・プラ・プリンセス』は25年ほど前に希林さんからプレゼントされたものです。年代物のイギリス車で当時、お母さんの入院先に大きな車で通っていた浅田さんを気遣い、希林さんが小回りの利く自分の車を譲りました。ヴィンテージマンションを好んだことと同様に、希林さんはクラシックな車が好きでした」(前出・浅田の知人)
浅田にとって46年にわたって苦楽を共にした樹木さんは芝居の師匠であり、同志であり、そして母のような存在でもあった。全身がんを公表した樹木さんの最後の1か月間、浅田は毎日のように樹木さんを見舞った。それだけに、樹木さんが遺したものを浅田が簡単に手放せるはずがなかったのだ。
「浅田さんは“ものの命を大切にして最後まで使い切る”という希林さんの精神を深く尊敬しています。マンションは希林さんが後押ししてくれた“終の棲家”ですし、希林さんから譲り受けた車は維持費がかかるのに25年も乗り続けています。どちらも浅田さんにとっては、希林さんの息遣いを感じる“形見”のような宝物なんです」(前出・浅田の知人)
7月17日、マンションの管理組合が男性を訴えた民事訴訟の判決が言い渡された。
「管理組合の主張が全面的に認められ、男性は損害賠償の支払いや敷地内の駐車禁止などを命じられました。また防犯カメラの映像から、エレベーターに白い液体を散布し、管理室の鍵穴に接着剤らしき液体を差し込んだのもこの男性と認定されました。すでに男性は所有していた部屋を売却していますが、判決に不服だったようで、控訴したそうです」(前出・マンション関係者)
浅田に現在の心境を尋ねると、冒頭のように、揺れる気持ちを短く語ったのだった。9月15日に樹木さんは七回忌を迎える。浅田は墓前に、法廷闘争の行方と、大切な“形見”を守る決意を静かに報告するはずだ。
※女性セブン2024年8月22・29日号