ライフ

マンガライターの横井周子さんが語る『トラとミケ』の魅力「命ははかない。そんな当たり前の真理が、物語の根底に吹き込まれている」

第6巻 第69話「凍凪の候」より

第6巻 第69話「凍凪の候」より

「女性セブン」に連載中のねこまきさんのマンガ『トラとミケ』。発売されたばかりの単行本第6巻も絶好調だ。発売早々重版が決まり、シリーズ累計部数は11万部を突破。あるファンのかた曰く、「トラとミケは年を重ねれば重ねるほど、心にズシンと響く」。ニャンでなのか──。マンガライターの横井周子さんが、その魅力について綴る。

 * * *
 なつかしくて、どこか切ない。あざやかな夕焼けを見た時、夏の終わりにひぐらしの声を聞いた時、きれいな空気を深く吸い込んだ時──。ねこまき『トラとミケ』は、人生の中で誰もが経験したことがあるであろう、あの感覚を届けてくれるマンガだ。

 名古屋・猫道商店街にある老舗どて煮屋「トラとミケ」を舞台にした、ご存知「女性セブン」の人気連載である。お店の看板メニューは、牛すじやモツを赤味噌でじっくり煮込んだどて煮とサクサクの串カツ。関東育ちの私は食べたことがないのだが、マンガを見ていると、なんだかすごくおいしそうだ。割烹着姿で忙しく店を切り盛りする老姉妹トラとミケの頭には、ぴょこんと飛び出す猫の耳……。そう、このマンガには人間は出てこない。みーんな人間味あふれる猫たちなのだ。

 おいしい食べ物とビール、古い商店街の街並み、そして時に悩みながらもそれぞれの生活を営むかわいい猫たちの姿。くすっと笑えるたくさんのおしゃべりとともに、楽しい日々がフルカラーの柔らかな筆づかいで描かれていく。年に一度のペースで刊行されているコミックスには12のお話が収録されていて、一冊の間にひとめぐりする四季も大きな魅力になっている。サービス精神旺盛なことで知られる名古屋が舞台なだけに、食・酒・町・猫・人情・季節……と見どころがてんこもりなのだ。旅行者のようにキョロキョロと細部を楽しみながら、ゆっくりと読み進めるのがおすすめだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン