アフレコに臨む杉良太郎

アフレコに臨む杉良太郎

 杉自身、オファーをきっかけに「なぜ生きるか」、あらためて自分に問いかけたという。

「自分は目的があって生きているのか。流されてはいないか。昨日と同じように生き、これから先も淡々と同じ日々を繰り返していくのだろうか――。

日常では生活に追われてあまり考えない自分の人生を、この機にじっくり見つめ直しました。慣れ親しんだ生活のリズムを外れていつもとは違ったステップを踏むと、目に映る世界が変わる。新たな気付きがある。なぜ生きるかと、立ち止まることができてよかった。老若男女誰しも、人生の道標となる言葉だと思います」

 今年で芸能生活60周年となるが、アフレコは初挑戦だったという。

「大昔の映画は音声を同時に録っていないものだから、自分が演じた口の動きにあわせて後から台詞を録音したことはあります。でもアニメーションで声の演技をする機会はなかった。80才になってなじみのなかった仕事がくるんだと不思議な気持ちもあったし、初めての経験に不安も少なからずあった。それでも挑戦したい気持ちが勝ってやってみたら、初めてでもどうにか形になった。何事も本人が“だめだ”と思った時点で、だめになるんだなと」

 年齢をいいわけにしてはいけないと、自戒を込めて語る。

「“杉さん、若いじゃないですか。まだやれるでしょう”とよく言われるんだけど、見た目だけなの。今日のアフレコでも目がかすんで台詞がよく読めなかったし、もう80才なんだもの。それなりにガタがきます。だけど今の時代、80才を歳だと考えてはいけないね。厚労省の健康行政に携わって65才以上のヒップホップダンスチームの全国普及に取り組んできて、7月には最高年齢の95才のダンサーにイベントで踊ってもらったばかり。その人たちを前に“80才になると、しんどいね”なんて弱音はとても吐けない。

 最近はね、息子の(山田)純大とトレーニングしているの。筋肉をつけなきゃだめだと言われて、コロナ禍で中断していたジム通いを再開した。1時間ほど、週に2回しぼられています。純大は、“吸う、吸う、吐いて、吐いて”とか呼吸まで管理してくる。こっちは息を吸っている時に吐いてと声をかけてきて、テンポが合わない。で、“はい、あと10回!”なんて言って、横で回数を勘定している。もううるさいって(笑い)。よたよた歩かないように足腰を鍛えようとやっているけれど、結構きついんだ」
 
 文句を言いながらも、どこか楽しそうな杉。

生活を変えることを厭わず、未知の経験でもしり込みをしない。今後の人生で挑戦したいことを問うと、「本業でやったことがないのはミュージカルくらいかな」と仕事と直結して答えるのが杉らしい。人生を捧げる社会福祉活動でも新たな挑戦ではなく、これまでの活動の延長線として、教育の拡充を掲げる。

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