中国に関する著書が多数ある社会学者・橋爪大三郎氏(写真/共同通信社)

中国に関する著書が多数ある社会学者・橋爪大三郎氏(写真/共同通信社)

米国などに比べ日本政府の認識は甘い

 そして、明確な反対勢力が中国内にはないから、こうした中国の異様なナショナリズムは外国がコントロールするしかない。

 米国は、中国吉林省で4人の自国民が地元の男に刺され負傷する事件(6月)を受けて、駐在員や家族を引き揚げたり、資本提携を解消したり、投資をやめたり、中国との関係を断つ方向に超党派で動いた。

 それに比べて日本政府の認識は甘い。駐在員の家族を引き揚げさせるというのは最低限のこと。できるなら取引先を中国以外に付け替えるくらいしなくてはならない。

 今回の10歳の少年の犠牲は、非常に無念だ。だからこそ、この事件をきっかけに、日本はこの中国共産党政権の本質的な危険性をきちんと認識し、対応しなければならない。

【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。著書に『おどろきの中国』(講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)など。近著に『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)。

※週刊ポスト2024年10月11日号

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