「派遣切り」などの問題で抗議の声を上げる労組関係者ら。2009年(時事通信フォト)

「派遣切り」などの問題で抗議の声を上げる労組関係者ら。2009年(時事通信フォト)

 しかしダブルワークにスキマバイト、なかなか厳しいものがあるとも。

「条件の悪いとこばかりだね。交通費が出ないとこもあるし扱いも雑。レビュー書いたって運営は事業者の味方だから意味なんてない。(スキマバイトサービスとの)付き合いはほどほどにしないと、あの地獄だったハケンの時代みたいになりかねないと思う」

 彼は2000年代に製造業の派遣も経験している。「あれは地獄だったよ、なんであんなのが野放しだったのかわからない」とも。まさに政治による人禍だったが風化した。それでもそれぞれに、当事者の心にはあの「ハケンの時代」が残っている。貴重な証人の言葉だ。

「人間を売り買いする立場から人間を売り買いする場を提供しているだけになった。使わなきゃいけない身なのが切ないけどね、まあ仕方ないね。闇バイトよりはマシと思うしか無いよ」

スキマバイトのCM見ただけで思い出して嫌になる

 スキマバイトの一部サービスには闇バイトやいかがわしい求人も横行したとされる。「真夜中の猫探し」「入浴介助の練習(10代女性のみ)」といった文言で強盗の下見や性的な仕事を募集していたのではと報じられた。各社対策を強化するとしたが、求人に関しての対人確認が本当になされているのかどうか、疑いを持たれても仕方のない状況だ。

 現在は情報通信関連企業に勤める元新聞記者はこう語る。

「社会のインフラとか既存の人間の営みにタダ乗りして儲ける商売ですよ。人の安全とか生活の安定を図るための管理を『コスト』と切り捨てて、食いつぶして逃げるまでがセットでしたよね、2000年代の派遣問題で事件化した連中は実際、そうだったわけで」

 2000年代の派遣問題はグッドウィルを中心に多くの逮捕者を出した。幹部は引退して海外で悠々自適に暮らしたり、形ばかりの自己破産で逃げおおせて莫大な資産を使って別の事業をしていたりする。まさに「やったもん勝ち」「今だけ、金だけ、自分だけ」の端緒だった。

「スキマバイトの経営者がそうだとはわかりませんが、現実はあの派遣問題が起き始めた時代と変わらない状況だと思いますよ。2012年の派遣法改正と同様の、スキマアプリを念頭にした労働法の法改正が求められると思います」

 当時と同様、それでも生きるために、生活の足しにと役に立っている人も多いだろう。手軽に賃金を得ることができるし、煩わしい人間関係もない。割り切れる人なら「スキマさん」だろうが「そこの人」「あんた」でも構わないという人もいる。

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