ライフ
2025年の将棋界展望

《2025年の将棋界展望》藤井聡太の「八冠復帰」に立ちはだかる新スターは誰か? AIの評価が低い“振り飛車”戦法復権にも期待

藤井聡太の「八冠復帰」に立ちはだかる新スターは誰か(写真/共同通信社)

藤井聡太の「八冠復帰」に立ちはだかる新スターは誰か(写真/共同通信社)

 2024年の将棋界の一大トピックといえば、大スターの藤井聡太の八冠が崩された事件。今年は藤井七冠が再び八大タイトルを独占するのか、ライバルがそれを拒むのか──。日本推理作家協会将棋同好会共同代表で小説家の葉真中顕氏と、名人戦などの観戦記を寄稿した経験を持ち、新刊『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)が話題の法学者の木村草太・東京都立大教授が棋界のこれからを語った。

振り飛車党の復権なるか

葉真中:実力の拮抗した棋士たちがライバル物語を繰り広げる「群雄割拠の将棋界」が好みの僕が、今年期待するのは永瀬拓矢九段です。藤井さんにタイトル戦で勝つ棋士に求められる条件は「絶対に勝負をあきらめない」という執念でしょう。その意味では「劣勢でも簡単には負けない」という気迫をファンに必ず見せてくれる永瀬さんの将棋は必ず名勝負になりますし、ファンとしてはドラマを期待してしまいます。

木村:私も同意です。藤井さん、永瀬さんをはじめとする現代のトップ棋士たちはみなストイックで、AIを駆使しながら真摯に将棋の勉強に打ち込んでいるという共通点があります。そうでなければ勝てない時代になったということかもしれませんね。

葉真中:「飲む打つ買う」が当たり前だった昭和の棋士たちの豪快な伝説が流布されていた数十年前とはずいぶん変わったという声もあります。もちろん当時の棋士たちも真剣に将棋に打ち込んでいたことは大前提ですが。

木村:プライベートな話題がなかったとしても、棋士の話はいまでも十分、刺激的で面白いですね。先日、中村太地八段が「対局中の30秒は一瞬だが、日常生活の30秒は長く感じることがある」というユニークな話をされていて、棋士の時間感覚について、さまざまなことを考えさせられました。

葉真中:あと今年の将棋界で願っているのは、振り飛車党の将棋ファンとして、振り飛車戦法の復権ですね。

木村:確かに現在の将棋界を見渡すと、振り飛車党の有力棋士はA級棋士の菅井竜也八段など数えるほどで、藤井さんを筆頭にトップ棋士のほとんどが居飛車党ですね。

葉真中:AIによる評価値が低くなりがちな振り飛車は否定されたという説もありますが、僕はまだまだ振り飛車の可能性は残されていると信じています(笑)。

木村:私はベテラン勢の活躍、なかでも旧知の木村一基九段にエールを送ります。将棋界の見どころはタイトル戦だけではありません。叡王戦の予選も勝ち上がっている木村九段に「受けて勝つ」将棋の神髄を見せていただきたいと思いますね。

前編から読む

【プロフィール】
葉真中顕(はまなか・あき)/小説家。1976年、東京都生まれ。東京学芸大学教育学部除籍。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家デビュー。『絶叫』(光文社)『政治的に正しい警察小説』(小学館)など著書多数。最新著書は『鼓動』(光文社)。

木村草太(きむら・そうた)/法学者。1980年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。現在は東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部教授を務める。専攻は憲法学。法曹界きっての愛棋家として知られる。最新著書は『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)。

※週刊ポスト2025年1月17・24日号

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン