またある時は自然食系の会合で知り合った先輩女性〈マッスーさん〉がSNSにあげていた文鳥の写真を、抗鬱剤の服用中に無意識に流用。指定された謝罪場所に向かう道中、正しい謝り方をSNSで検索した私が、結局はそれも見透かされて土下座する羽目になるなど、全てがよくできた喜劇にも生き地獄にも思えてくる。

「実は私も発売日の1週間前にXを始めたんです。ヤバい、もう本が出ちゃうって、大慌てで(笑)。だから彼女達の気持ちは今はまだわからないかもしれない。でも、理解したいとは思っている。特にこのフォロワーが欲しいというような、あらゆる物事がタグ付けされる中でどこにも分類してもらえず、軽視されがちな個人の苦しみを、私はひたすら描写を積み重ねることで理解し、できるだけ偽善的じゃない形で肯定したいんです。

 傍目には下らない悩みに見えても本人達は切実で、自分なんか要らないとすら思ってしまう。そうやって自分や人間について考えてしまうのが人間らしさだとしたら、その人間らしさを手放して、数字だけが真理だって割り切れるソラみたいな子が、たぶん現代では社会的強者なんです」

今SNSによって何が起きているか

 その後も誰かに期待しては失望することを繰り返し、〈私の玉ねぎはとても繊細な玉ねぎです〉〈社会に無理矢理迎合するような真似をすると皮が剥け、鍋の中で溶け始めます〉と、ソラにすら言えずにいる私は思う。〈誰かと関係を持ち、その摩擦で玉ねぎを傷つける〉〈私は一体何がしたいのだろう〉〈玉ねぎを捨てることでしか拓けない世界というものが、あるのだろうか?〉

 そんな中、完全機械化が売りの回転寿司店を訪れた私は、子供客の迷惑行為を動画で告発するソラの姿が〈憤っている人のコピー〉にしか見えず、思わずスマホをレーンに流してしまう。

 だがそんなデトックス状態も長くは続かず、ソラが投稿した唐あげや餃子といった〈変わり種〉寿司を私が爆食する動画が国内外でバズり、念願のフォロワー1万超えを果たしたことで、再び自撮り生活に戻るのだ。

関連記事

トピックス

硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン