二軍を経験させるべきだった?
ノムさんによれば、これが原因で2年目の田中は9勝7敗と低迷したのだという。
「足が速い、遠くへ飛ばす、球が速いの3つは天性だ、努力してもできないと言い続けてきたのに、なんでマー君の時だけ賛同してしまったのかわからない。19歳という若さだからいけるだろうと思ったんだろね。しかし、スピードを追求すると力みが生じ、フォームに微妙な狂いを生じてしまった。
ピッチャーの生命線は投球フォームだからね。コントロールをよくすることを目指させるべきだった。コントロールのよさは、バランスのとれたフォームから生まれる。だからスピードを求めさせたオレ自身が監督失格といえる」
高卒ルーキーだった田中を一軍で使い続けるかも悩んだという。一軍で投げさせてみたところ3試合連続ノックアウトだったが、不思議なことに敗戦投手にならない。そこで出たのが「マー君神の子、不思議な子」というノムさんのコメントだった。
「高校生だし、一度は二軍で鍛えたほうがいいんじゃないかと思ったね。オレは2年半も二軍経験をした。何がいいかというと、二度と(二軍に)戻りたくないと思うわけ。お客さんがいないところで野球をやる。同じ野球でも、こんな寂しいことはなかったね。
それにいくら打っても自信がつかない。2年目は二軍でフル出場して3割2分を打って、打撃ベスト10の2位になったが、周りも評価しないしね。そういう気持ちをマー君に経験させておくべきじゃないかと思って悩んだことがある」