『肝っ玉おっ母と子供たち』の稽古の様子。上演する劇場「能登演劇堂」は仲代が劇場創設に尽力した

『肝っ玉おっ母と子供たち』の稽古の様子。上演する劇場「能登演劇堂」は仲代が劇場創設に尽力した

「向いていないから稽古は人の10倍」

 黒澤明監督の『七人の侍』で映画デビューしたのが1954年。以来、実に70年以上にわたって仲代は休むことなく斯界で活躍し続けてきた。

 そんな仲代の役者人生の軌道を決定づけたのは、20代前半の決断だ。日本映画全盛期、高収入が保証される映画会社との専属契約を結ばず、最初から「五社協定」とは無縁のフリーランスの道を選んだ。これが結果的に仲代の芸域を広げることにつながった。

「フリーランサーだったから、仲代だったらいつでも使えると偉い監督さんから声がかかった。ギャランティーは安かったけど、素晴らしい作品や役者たちと出会えた。ただ、私はシャイで役者に向いていないのに役者を選んだわけだから稽古は人の10倍やりました。いろんな作品をやるのではなく、厳しい監督のもとで一つひとつの作品と向き合い、一生懸命頑張るというやり方でした」

 そうして生まれたのが小林正樹監督の大作『人間の條件』であり、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『切腹』といった作品群だった。

 1960年代以降も仲代は映画と演劇の両輪で役者としての地歩を固めていく。一方で1975年には、「プロの俳優が無名にかえって修行する場。新人養成の場」として「無名塾」を開塾。妻の宮崎恭子とともに後進の育成に乗り出し、役所広司や益岡徹、若村麻由美といった役者が巣立っていった。

 取材当日は稽古場「仲代劇堂」で3時間以上も稽古が行なわれたが、仲代が塾員生を注意したり叱ったりする場面は一度としてなかった。

「だって、みんなこの芝居の共演者だから。共演者同士のダメ出しはダメじゃないかと思っています。昔は『俺だったらそうしない』なんてことを言ってましたが(笑)」

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